研究課題/領域番号 |
14J02311
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加藤 真也 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 量子光学 / 共振器量子電磁力学 / ナノフォトニクス |
研究実績の概要 |
光の波長程度まで細く引き伸ばされた光ファイバーの先端をレンズ状に加工すると、光ファイバーを伝搬してきた光は端からファイバー外へ出射する際にレンズ部で集光されファイバー端近傍に焦点を結ぶ。その性質を利用して、レーザー冷却されたセシウム(以下、Cs)原子をファイバー端近傍に焦点を結ぶレーザー光によって光トラップする実験を行った。結果の詳細な検討からCs原子をファイバー先端に光トラップすることに成功していることがわかったが、トラップ中に原子が滞在する時間はかなり短く、またトラップに成功する確率もかなり低いことがわかった。その原因は作製したファイバーレンズが原子からの蛍光収集に最適化した設計であったためで、トラップに最適な形状を検討する必要があることがわかった。 これらの検討と並行して、光ファイバーを「細く引き伸ばす」工程に関しても詳細な検討を行った。今回その工程に数値最適化を施すことで波長以下の太さ(直径400 nm)の領域が均一に1 mm程度続く形状の実現に成功した。このような波長程度のコアを持った導波路ではコア部からエバネッセント場として光が染み出し、ファイバー側面近傍の原子と相互作用することが可能になる。 このように作製したテーパー型の高透過率光ファイバーにファイバーブラッググレーティングミラーと呼ばれるファイバー内に形成されたミラーを組み合わせて光共振器を作製し、共振器内の光とCs原子が強く相互作用する振る舞いの観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
レンズファイバーを用いた実験では原子の光トラップに成功し、今後はその最適化を行う段階に達した。これは当初計画に沿った進展である。今年度はそれに加え、高透過率のテーパー型光ファイバーを用いた光共振器内の光と近傍にトラップされたCs原子の強い相互作用の観測にも測定した。この系は共振器量子電磁力学を考える上で非常に魅力的な実験系で、光ファイバーを介した低損失な光伝搬を用いたより高度な量子状態制御実験を可能にする。
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今後の研究の推進方策 |
レンズファイバーを用いた実験ではより原子トラップに最適なレンズ形状の探索とその実験的な検証を行う予定である。高透過率テーパーファイバを用いた光共振器の実験では、より共振器内ロスの小さな光共振器を準備することで、より効率の良い量子状態制御の実験を行う予定である。さらに、同様な実験装置を複数台用意し、結合する形の実験も行う予定である。
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