研究課題
昨年度の研究実施状況として大きく分けて「スピン検出器の高効率・高安定化」、「トポロジカル絶縁体薄膜の電子状態の膜厚依存性の観測」の以上2点が挙げられる。以降ではこの2点について概要を示す。1年目には、高分解能スピン分解光電子分光装置の開発を行い、スピン分解時のエネルギー分解能として5 meVの高分解能化を達成したがVLEED型スピン分析器の強磁性薄膜ターゲットの作製および磁化反転機構の改良により、高効率・高安定で動作するスピン分解測定が可能となった。MgO上の鉄薄膜の作製条件を調整することで高品質なターゲットが得られた。排気系の強化及び重点的なベーキングによりVLEED測定槽の高真空化を達成した。走査毎に強磁性薄膜ターゲットの磁化反転を可能とするシステムを構築した。標準試料としてビスマス薄膜を用いてスピン分解ARPES測定を行い、有効シャーマン関数として0.14の、高効率かつ高安定で動作するスピン検出器を実現した。建設した装置を用いてトポロジカル絶縁体Bi2Se3薄膜の電子状態の層数依存性について系統的に測定して、トポロジカル相転移や次元性の変化に伴う電子状態を観測した。量子井戸構造の準位が膜厚によって変動することで二次元のトポロジカル絶縁体-通常の絶縁体間の相転移が理論的に予測されているため、層数を制御させて作製した薄膜のARPES測定を行った。その結果、相転移に伴う変化を示唆する価電子帯の電子状態の変化を観測した。さらに厚い層数では二次元-三次元のクロスオーバーを示唆するディラック錐同士の混成-非混成の変化を観測した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Letters
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http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.115.266401
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