研究課題/領域番号 |
14J02420
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 沙弥佳 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞競合 / エンドサイトーシス / Rab5 / Ras / MDCK / 腫瘍学 / apical extrusion |
研究実績の概要 |
当研究室では「がんはどのように発生しているのか」という基本原理の解明のため、イヌ腎上皮由来・非形質転換の細胞株であるMDCK細胞を用いたin vitroモデルシステムを樹立し、哺乳類細胞において正常細胞と変異細胞の境界で起こる相互作用の解析を行っている。特に、当研究室で見出されたRasあるいはSrcが活性化した変異細胞が正常上皮細胞に囲まれると細胞層の頂端側に排除される現象(apical extrusion)は新規がん治療のコンセプトとなることが期待される。本研究ではエンドサイトーシス機構がapical extrusionにどのように関与しているかを解明することを目的としている。 昨年度までの研究により、正常細胞に囲まれたRas変異細胞においてエンドサイトーシスが亢進していること、Ras変異細胞のエンドサイトーシス機構が変異細胞のapical extrusionに必要であることが明らかとなった。本年は“Ras細胞は正常細胞に囲まれることで、なぜエンドサイトーシスを亢進させるのか、その結果どのような挙動を引き起こしているのか”を解明することを目的とした。 蛍光免疫染色による解析の結果、正常細胞に囲まれたRas変異細胞ではRab5の機能依存的にE-cadherinやEPLINの局在が変化しており、apical extrusionに重要な役割を持つことが明らかとなった。また当研究室では以前に、正常細胞による、変異細胞に対する防御機構であるEDAC(epithelial defense against cancer)を報告している。Ras変異細胞のRab5集積には、EDACに関わる分子である正常細胞のFilamin, E-cadherinが必要であることが判明した。 以上の結果から、Ras変異細胞におけるエンドサイトーシスの亢進は、隣接する正常細胞からのEDACによる排除作用に反応して惹起されており、その結果の一例として細胞間接着の局在を変えることでapical extrusion を促進している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は“Ras細胞は正常細胞に囲まれることで、なぜエンドサイトーシスを亢進させるのか、その結果どのような挙動を引き起こしているのか”を解明することを目標としており、蛍光免疫染色を用いた細胞接着分子やEDACに機能する分子の解析により上記の目標を達成することができた。更に、本研究成果は国際学術誌に投稿するレベルまで発展したため、上述の通り評価した。申請時に予定していた免疫沈降法やエンドソーム分画、活性化Rab5に対する抗体を用いた検証は解析中のデータも合わせ今後の機能解析として進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、正常細胞に囲まれたRas細胞におけるエンドソームの形態学的所見や他のRabタンパク質の関与を検討することにより、Ras変異細胞において活性化しているエンドサイトーシス経路の詳細な分子背景やシグナル伝達経路を解明していく。またエンドサイトーシスに伴う細胞接着タンパク質の局在変化に関して、タイトジャンクションなど他の細胞接着で機能している分子についても解析を進めていくことで、正常細胞に囲まれたRas細胞がapical extrusionされる過程での重要な分子基盤やEDACの作用点を解明していく予定である。また、現在投稿中の論文においても投稿作業を進める予定である。
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