研究課題
本年度は、増殖組織特徴遺伝子群のうち、マトリセルラー蛋白であるペリオスチンを標的とし、RNA干渉を用いてその発現を抑制する新規1本鎖核酸医薬(NK0144)の脈絡膜増殖組織形成抑制効果を検討した。In vitroのアッセイ系を脈絡膜増殖組織においてペリオスチンを産生している主な細胞と考えられる培養ヒトRPE細胞を用いて行った。NK0144はTGFβ2刺激によるRPE細胞のペリオスチン発現増幅を細胞生存率に影響することなく9割以上抑制することを確認した。次に、TGFβ2刺激によるペリオスチン発現増幅下で亢進するRPE細胞の増殖、接着、遊走それぞれをNK0144により有意に抑制出来た。また、RNA干渉を用いる2本鎖siRNAの場合に問題視されているTLR3を介した非特異的血管新生抑制作用に関しても、1本鎖であるNK0144を導入したRPE細胞では認めなかった。In vivoではマウスレーザーCNVモデルを用いてNK0144の脈絡膜増殖組織に対する作用を検討した。CNVモデルにFITCで標識したNK0144を硝子体内投与したところ、投与後24時間からRPE細胞への到達を認め、少なくとも120時間までは残存していることを確認した。また、NK0144はこのモデルにおけるRPE細胞のペリオスチン発現を有意に抑制していることも確認した。NK0144投与によりCNV、脈絡膜線維組織ともにコントロールに比べて減少していた。この効果は2本鎖siRNAでは非特異的な効果が疑われたが、NK0144ではペリオスチン抑制による効果と考えられた。NK0144のin vivoでの毒性をERGとHE染色・TUNEL染色を用いて評価を行ったが、いずれの検討でも明らかな毒性は認めなかった。以上よりNK0144は脈絡膜増殖組織に対する新たな治療薬となる可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
増殖組織特徴遺伝子ペリオスチンを標的とした新規一本鎖核酸の脈絡膜増殖組織に対する新たな治療薬の可能性について検討し、国内・国際学会で発表を行い、論文での発表も行った。これにより網脈絡膜増殖組織の病態解明、治療薬開発において、重要な知見を得ることができた。本年度の研究により、臨床試験実施に向けてプロジェクトを進展させることができ、新規治療薬開発に向けて前進することができた。
計画通り、網膜前血管新生におけるペリオスチン標的新規一本鎖核酸の効果に関して検討を進める。これにより脈絡膜増殖組織だけでなく、網膜増殖組織における新規治療薬の可能性に関しても検討が出来る。
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