研究課題/領域番号 |
14J02443
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 剛伸 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 食品 / 品質評価 / 製造 / 麺 |
研究実績の概要 |
本研究は,パスタを例に高品質な乾燥食品を製造する際の指針を提案することを目的としている.食品の高品質化にあたっては,複数の品質を同時に高めることが必要であるが,特に乾麺においては食感を主に決定するグルテンタンパク質の構造を制御することが最重要であり,麺内部のグルテンタンパク質の構造を三次元的に把握することが不可欠である.しかし,それを可能とする計測手法は存在せず,例えば,グルテンタンパク質の構造をどのように変えれば,どのような食感が得られるのかについて食品の製造分野では暗中模索の状態であった.そのような状況において,当初は計画していなかったが,試料の透明化と蛍光観察とを組み合わせる手法に着目し,麺内部のグルテンタンパク質の構造を三次元的に計測することを年度の途中で新たに考案した.そのため,色や表面構造といった品質の評価に加え,特にこの新たに考案した手法の開発を重点的に実施した. 透明化と蛍光観察とを組み合わせる手法の適用に際し,麺をいかに透明にするかが重要な鍵となる.これまでに動植物の組織を透明化する溶液はいくつか開発されているが,これらの溶液では,麺などを透明化できないか,あるいはある程度透明化できてもグルテンタンパク質の構造を変えてしまうという課題があった.そこで本研究ではこれまでとは全く異なる物質を見出し,この物質を主成分とする新たな透明化溶液を開発した.そしてこの溶液を用いて麺をまるごと透明化し,二光子励起顕微鏡を用いることで,麺内部のグルテンタンパク質の三次元構造の計測に初めて成功した.なお,本内容について日本農芸化学会2016年度大会で発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記したように,本年度は麺類の食感を支配するグルテンタンパク質のネットワーク構造を初めて三次元的に測定できるようにした.これは当初の計画では予定していなかった新たなアイディアに基づくものである.これまでは,ネットワーク構造をどのように変えれば,どのような食感が得られるのかについて食品の製造分野では暗中模索の状態であったが,本研究において三次元的な構造を把握できるようになったことで,今後,食感が生起するメカニズムの解明等にもつながることが期待できる.このように,研究は当初の計画以上に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度,新たに食品中のタンパク質のネットワーク構造が計測できるようになった.そのため,次年度では,当初の計画に追加し,本年度に引き続き,食品中の構造と品質のさらなる詳細な関係を調べ,パスタを例に高品質な乾燥食品を製造する際の指針を提案するという研究目的の達成に努める.
|