本年度は,1. 1成分Bose-Eisntein凝縮体(BEC)におけるBogoliubov波乱流,2. 強磁性スピノールBECにおけるスピン波乱流,3. 超流動4Heにおける非一様量子乱流に関連する研究を行った.以下、それぞれの研究実績について記載する。
1. 1成分Bose-Eisntein凝縮体におけるBogoliubov波乱流--本研究はスピン自由度を持たない1成分BECにおける弱波動乱流の性質を解析・数値的に調べた.この乱流はBogoliubov波と呼ばれる素励起が弱く相互作用している波が支配的な乱流である.我々は1成分Gross-Pitaevskii(GP)方程式と弱波動乱流理論を用いて,巨視的波動関数,密度分布の相関関数,Bogoliubov波の波数分布に特徴的な-7/2,-3/2,-5/2乗則が現れうることを解析的に示し,また数値的にもそれらを確認した.加えて,実験観測についても議論を行った. 2. 強磁性スピノールBECにおけるスピン波乱流--本研究は,スピン1の自由度を持つ強磁性スピノールBECにおける弱波動乱流研究である.研究1とは異なり,このシステムではスピン波が支配的なスピン波乱流が実現する.我々は,スピン1スピノールGP方程式を解析・数値的に解くことで,スピン波乱流の性質を研究した.その結果,横方向のスピン相関関数にダイレクトカスケードとインバースカスケードに対応する-7/3乗則と-5/3乗則を見出した.しかし,実験観測については,十分に議論ができておらず,今後の課題として残った. 3. 超流動4Heにおける非一様量子乱流--本研究は,超流動4Heにおける非一様量子乱流の性質を調べた.考える状況は,有限温度の系で平行平板間において常流動体のみに印加速度場が与えられているシステムである.このとき,常流動体と平行平板による境界条件により,超流動体において非一様な量子乱流が実現する.我々は量子渦糸モデルの数値計算を行い,流れ方向の平均速度場に対数型の空間依存性が現れることを明らかにした.
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