研究課題/領域番号 |
14J02573
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
粕谷 菜月 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 寄生蜂 / コマユバチ / 寄生 / 宿主選択 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はショウジョウバエとその寄生蜂を用いて、宿主の寄生蜂に対する抵抗性の形質変化を遺伝学的に解明することである。ひいては宿主‐寄生者の複雑な関係が見られる要因を遺伝学的、進化学的に考察することを目標とする。宿主‐寄生者の関係は互いの抵抗性能力、寄生能力が質的、量的に変化するためその要因を探ることは難しい。しかしショウジョウバエは多くの遺伝子の機能が研究されており、より具体的なメカニズムを理解することができると期待している。 1.コマユバチ科の2種の寄生蜂(Asobara japonica、A. rossica)を複数のショウジョウバエ種、またはDrosophila melanogasterの遺伝変異系統の幼虫に曝露し、その寄生率を求めた。曝露には2つの異なる大きさの容器を用いた。大小2つの容器で比較すると、1系統において顕著な寄生率の差が見られた。寄生率の差はどちらの寄生蜂種においても見られた。このショウジョウバエの系統は一般的によく知られたD. melanogasterの遺伝変異系統の1つであるが、これまでに寄生蜂との関連は指摘されたことがないため、1つの発見であると言える。 2.コンテナ内に2つのシャーレを並べ、それぞれ異なるショウジョウバエ幼虫を入れた。そしてコンテナ内に寄生蜂を投入し、どちらのシャーレに訪問するのか行動を観察した。その結果、1の実験によって寄生率に差の見られた系統とD. melanogasterの野生系統Canton-Sで選択をさせたときのみ寄生蜂の訪問個体数に有意な差が見られた。このことから、この遺伝変異が寄生蜂の宿主選択に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寄生率測定の実験では当初予定していた手法とは異なるが、予定通り寄生率に差が見られる系統を見出すことができた。またその系統に関して、行動の観察においても基準系統Canton-Sとの間に違いが見られることが示唆される結果が得られ、今後の研究への足がかりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)寄生率に差が見られた系統は複数の遺伝変異を持つため、単独遺伝子の変異系統や遺伝子ノックダウンの手法を用いてどの遺伝子が寄生率の変化に寄与したのか調べる。 (2)寄生率に差が見られた系統の遺伝子とその要因と思われる形質の質的、量的関係を調べる。 (3)当該遺伝子とその要因と思われる形質の関連性が見られた場合、さらに他種や他系統においてどのようになっているのかを調べて、寄生率や選択行動と比較することにより宿主選択における当該遺伝子の役割を考察する。
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