本研究では、低分子医薬品や機能性核酸をその作用部位へ送達するため、「体内動態・細胞内動態制御素子の機能発動・解離を時空間的に制御可能なドラッグデリバリーシステム(DDS)」の構築を目指した。 第一年度では、核酸等を封入する『コア粒子』が、細胞内取り込みやエンドソーム脱出を担う『サテライト粒子』に取り巻かれた構造を持つNano-sized Satellite-type Organized Lipid-nanoparticle Assembly(Nano-SOLA)を開発した。本キャリアは二種の粒子が核酸の二本鎖形成により複合体化されており、機能性素子の配置制御が可能である。第二年度目では、本複合体を形成するサテライト粒子に着目した。本粒子の物性を蛍光分光学的手法により解明した。 本研究の第三年度目では、サテライト粒子を低分子送達へ応用するため、低分子医薬品の搭載並びに作用部位への送達を試みた。また、血管透過性の亢進が知られる炎症部位に対し粒子送達を試みた。 粒子径制御技術を用いて50nmから180nmまでの大きさの粒子を作り分け、炎症部位に対する送達能を検証した。その結果、全ての粒子で炎症の誘起による粒子集積量の増加が認められた。粒子集積性と炎症の強さを解析したところ、炎症が強いほど粒子が集積しやすくなることが明らかとなった。特に110nm程度の粒子が炎症部位の集積性に最も優れることを明らかとした。 ここまでの結果からサテライト粒子は高い血中滞留性を持ち、腫瘍や炎症部位へ効率的な送達が可能であることが分かっていた。一方、低分子医薬品をナノ粒子に搭載するためにはcLogP値が9程度必要である。低分子医薬品の疎水性を高めるため、環境応答性リンカーによる二量体化を行った。抗がん剤カンプトテシンの二量体化薬はカンプトテシン単体に比べて効果が向上し副作用が提言されることを明らかとした。
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