報告者は先行研究で、メラノソームの微小管順行性輸送の制御因子であるkinesin-1の欠損によりメラノソームが核周辺に凝集することを明らかにしている。そこでまず、マウスに存在する全43種類のKif分子に対するsiRNAを作成し、メラノソームの凝集が誘導されるものを網羅的にスクリーニングし、複数種の候補Kif分子を同定した。次にこれら結果のオフターゲット効果の可能性を検証するためにsiRNAのターゲットサイトをさらに3本増やし、またsiRNAの処理により実際mRNAの量が低下していることをRT-PCRにより検証を行った。これらの一連のスクリーニングの結果Kif1cという機能未知の分子を同定することに成功した。Kif1cのメラノソーム輸送への関与については証明されなかったが、これらの実験の過程でKif1cのtailドメインがメラノソーム特異的に局在することを発見した。さらに興味深いことに精製したKif1cのtailドメインを固定したメラノサイトと反応させると細胞に発現させた時と同様に、メラノソームに局在した。このことからKif1cのtailドメインが新規のメラノソーム特異的マーカーとして機能することが示唆された。さらに詳細な解析の結果、Kif1cのtailドメインはメラノソームの内腔部分であるメラノコアを直接認識していることが判明した。そこでKif1cのtailドメインを”M-INK (Melanosome INteracting Kif1c)”と名付け、このツールを利用した細胞染色への応用を行った。興味深いことにM-INKはこれまで染色が難しかったケラチノサイト内に転移されたメラノソームも認識した。
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