研究課題/領域番号 |
14J02639
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市川 修平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 半極性 / 内部電界 / 点欠陥 / 転位 / AlGaN / 輻射再結合寿命 / カソードルミネセンス / 有機金属気相成長 |
研究実績の概要 |
本研究は、AlGaN系半導体を利用した高効率深紫外発光の実現を目標としている。本年度は、1) 半極性面AlGaN/AlN量子井戸構造を作製し、活性層にかかる内部電界の低減、および輻射再結合確率の増大を目指した。また、2) 非輻射再結合確率の低下に向けて、AlNおよびAlリッチAlGaNにおける支配的な非輻射再結合中心の同定を試みた。
1) 様々な半極性面AlN基板上に((1-102)面、(11-22)面、(20-21)面を使用)有機金属気相成長法を用いて、AlGaN/AlN量子井戸の結晶成長を行った。従来の極性面上の成長よりも炉内圧力を上げて成長を行うことで、原子レベルで平坦な表面および急峻な量子井戸界面を有する高品質半極性面AlGaN/AlN量子井戸の実現に成功した。作製した半極性面量子井戸において、発光エネルギーの井戸幅依存性から見積もられる内部電界の値は、従来の極性面量子井戸と比較して3分の1以下に低減されていることが明らかになった。また時間分解フォトルミネセンス測定の結果から、輻射再結合寿命の著しい短寿命化が示唆され(従来比100分の1程度)、室温付近におけるバンド端発光強度が従来比75倍以上の、強発光半極性面AlGaN/AlN量子井戸の実現に成功した。
2)さらなる効率の改善に向けて、支配的な非輻射再結合中心の同定を試みた。作製したAlリッチAlGaN量子井戸やAlN薄膜についてカソードルミネセンスマッピング測定を行い、転位近傍における暗点のコントラスト、および暗点径の温度依存性を測定することで、各温度領域における転位の効率低下への寄与について調査した。その結果、現状のAlNおよびAlリッチAlGaNにおいて、室温付近では転位が非輻射再結合中心として殆ど機能しておらず、点欠陥が支配的な非輻射中心であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成長圧力の最適化により非常に高品質な半極性面AlGaN/AlN量子井戸を実現し、従来の極性面量子井戸と比較して内部電界の低減・輻射再結合寿命の短寿命化・発光強度の増大を実証した。また、支配的な非輻射再結合経路に関する知見も得られ、研究は極めて順調に進行している。当初の研究計画に比べて遅れは生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
高品質な半極性面量子井戸の実現に成功したが、高効率深紫外発光素子の実現に向けてさらなる内部量子効率の改善が求められる。本年度の成果から、室温付近における支配的な非輻射再結合中心が点欠陥であることが明らかになったため、今後はその点欠陥種の同定と低減手法の模索を行う。また、半極性面量子井戸の実現にともない、物性的観点からAlNの未解明パラメータ(自発分極、圧電定数等)の解明への寄与も期待される。今後より詳細な光学特性評価により、物性定数の解明も試みる。
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