「生細胞内で発現された転写因子の段階的なDNA認識動態について、各段階の動態の拡散特性を定量化し、それらの拡散動態が生じるために必要な外的・内的環境条件を決定づけること」を目的とし、北海道大学 細胞機能科学研究室のご協力の下、以下の実験を行った。 (1)カイコ絹糸腺組織でのin situ-FCS解析の完了: カイコ由来転写因子FMBP-1のin situにおける動態解析のため、カイコ5齢幼虫の後部絹糸腺内において、パーティグルガン法でEGFP-FMBP-1蛋白質の一過的導入・発現を行い、蛍光相関分光法(FCS)を用いて解析した。その結果、野生型のEGFP-FMBP-1は申請書に記載したHeLa細胞における解析結果と同様、4つの拡散動態を示すことが明らかになった。さらに比較のため、DNA結合能を欠損させた変異体を導入・発現させた細胞においても解析を行った結果、こちらもHeLa細胞での観察と同様の結果を示した。これらの結果から、in situ環境においてもFMBP-1が段階的DNA動態を示すことが明らかになった。 (2)細胞ライセートFCCS解析: 生細胞内FCS解析によって明らかとなったEGFP-FMBP-1の細胞核内動態の特性をより詳細に検討するために、EGFP-FMBP-1発現細胞を界面活性剤Triton X-100で溶解処理し、認識配列・ランダム配列DNAプローブを添加した状態で蛍光相互相関分光法(FCCS)による測定を行った。その結果、相互作用の強度を示すRelative Cross Amplitude (RCA)値は、認識配列DNAプローブに対してのみコントロール(EGFP単独発現細胞のライセート中で測定)よりも有意に高い値を示した。今後はDNA分子濃度によるDNA相互作用の変化を定量化するため、Kdの算出を試み、さらに核内動態再現のための条件検討を進める予定である。 (3)論文投稿: HeLa細胞、カイコ後部絹糸腺細胞におけるFCS解析について論文を執筆し、海外学術誌に投稿した。2015年4月現在、レビュワーによる審査中である。
|