研究課題/領域番号 |
14J02648
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
井上 大介 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 微小管 / キネシン / 自己組織化 / 力学刺激 / 集団運動 / 非平衡系 / 伸縮刺激 / 配向構造 |
研究実績の概要 |
生体システムは細胞や細胞骨格に代表される多種多様な自走する構成要素が自己組織化することで形成されている。自走する構成要素から形成される構造は時間的空間的に発展し、その変化の中で筋肉のような秩序構造が創発する。その過程では構成要素間の運動の同調性が大きなカギを握ると考えられ、この同調性がいかにして制御されているのかを明らかにすることは、生体システムの形態形成機構を解明する上で重要である。自走する構成要素の同調性を制御する因子の一つとしては力学刺激が挙げられ、力学刺激の影響が生体の各構成ユニットの方向性を決定づけるのに重要な役割を果たすことが指摘されている そこで、本研究課題では、自走する細胞骨格フィラメントである微小管を構成要素として自己組織化させ、さらに力学刺激として外部から伸縮刺激を印加することで、微小管の自己組織化における伸縮刺激の影響を評価した。微小管は相補的なモータータンパク質であるキネシンを固定した基板上で並進運動させ、このシステムを基盤に微小管の自己組織化条件を検討した。その結果、微小管が高密度に基板上に存在する条件下において、微小管が局所的に配向し、多数のストリーム状構造を形成することを見出した。しかし、ストリームの方向に優勢性は見出されなかった。伸縮刺激は微小管をシリコーンゴム基板上で運動させ、独自に設計開発した顕微鏡上伸展装置で基板を伸縮させることで印加した。伸縮刺激を印加することで、ストリームが再組織化され、微小管の運動方向が伸縮刺激の方向に対して垂直方向に向き大規模な配向秩序が形成され、この配向秩序が長時間(8時間以上)に渡り維持されることも見出された。得られた画像から微小管の角度情報を抽出し、その分散度から微小管の配向度を評価する手法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の計画は、微小管の自己組織化の条件および微小管への伸縮刺激の印加方法についての検討、伸縮刺激が微小管の秩序形成に与える影響の評価が中心であったため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度では、伸縮刺激の印加により、その方向に応じて微小管が配向秩序を形成することを明らかにし、その解析手法についても確立した。次年度では、微小管に対して様々なモードで伸縮刺激を印加し、刺激のモードが微小管の秩序構造形成に与える影響について評価する。さらに、微小管の配向およびその長時間維持のメカニズムについて物理的モデルの構築を目指す。また、これまでは2次元基板上における微小管の秩序構造形成に着目してきたが、3次元的な微小管ネットワークを構築し、これまでと同様に伸縮刺激を印加し、ネットワーク構造の変化と伸縮刺激の相関についても明らかにしていきたい。
|