本研究は、自走する繊維状タンパク質である微小管を伸縮刺激下で自己組織化させ、伸縮刺激が微小管の自己組織化過程における微小管間の運動の同調性に与える影響について明らかにするものである。初年度では伸縮刺激を微小管に印可するための顕微鏡上一軸伸展装置の設計・開発および一過性の一軸伸縮刺激に対する微小管集団の応答性についての評価、解析手法の確立に着手した。本年度では、伸縮刺激のモードを一過性の刺激から繰り返し一軸伸縮刺激に変えることにより、微小管集団が刺激のモードに応じてジグザグ状の特殊なパターンを形成することを見出しており、その形成過程を解明するための力学的モデルの構築も行った。また、当初の主目的である微小管自己組織化過程における微小管同士の同調性への伸縮刺激の影響についても評価しており、より大きな伸縮歪により伸縮刺激を微小管に印可することにより、微小管同士の運動の同調性が向上し、それにより微小管集団全体の配向度の向上、配向時間の短縮が生じることを明らかにした。このことは、植物細胞内で観察される表層微小管の配列過程と類似しており、本成果は、植物細胞内の表層微小管の配向方向の決定機構を明らかにするうえで有益な知見を与えると期待される。さらに、これまで微小管の自己組織化は2次元平面で行っていたが、本年度では微小チャンバー内における3次元的な微小管の自己組織化も試みている。その過程において3次元的に構築した微小管の構造体は自発的に流動する配向構造を形成するという興味深い知見が得ることができた。本発見により、当該研究のさらなる発展が期待される。
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