研究課題/領域番号 |
14J02651
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲尾 周一郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | アラビア語 / クレオール / ピジン / 歴史言語学 / 社会言語学 / バンガラ語 / 南スーダン / ウガンダ |
研究実績の概要 |
平成27年度には、平成26年度の調査で発見・入手した20世紀初頭のアラビア語クレオール語彙集およびバンガラ語語彙集の文献言語学的分析を行った。まず、アラビア語クレオール語彙集の分析結果については、5月にブカレスト大学にて開催された国際アラビア語方言学会第11回大会で研究発表し、国外のアラビア語方言学者およびアラビア語クレオール研究者らと意見交換を行い、同学会予稿集にて研究論文を発表した。次に、バンガラ語語彙集の分析結果について、8月に京都大学で開催された世界アフリカ言語会議第8回大会において研究発表し、国外のアフリカ言語学者らと意見交換を行った。 平成27年度の調査として、5-6月に英国ロンドンの複数の図書館・文書館・博物館においてアラビア語クレオールやバンガラ語、およびこれらの接触言語が成立する19世紀末期~20世紀初期にかけての南スーダン・ウガンダ北部地域の歴史に関する一次資料を収集した。8-9月にはウガンダ共和国の首都カンパラ市、および同国北西部のアルア市においてヌビ語およびジュバ・アラビア語に関するフィールドワーク、および複数の文書館・図書館において文献調査を行った。 以上に加え、これらの調査およびこれまでの調査をまとめあげ、アラビア語クレオールの起源から現在に至るまでの社会言語学的歴史、および、現在のアラビア語クレオール話者が実践している越境的音楽文化に関する研究発表を2度のオープンセミナーにて行い、一般参加者およびアフリカ地域研究者らと意見交換を行った。これらの成果は、平成28年度に研究論文として取りまとめる予定である。この他、主に平成26年度までの調査に基づき、19世紀南スーダンにおけるアラビア語クレオールの起源およびそのヌビ語とジュバ・アラビア語への分岐過程に関する論考、およびジュバ・アラビア語と日本語方言における声調のあり方に関する論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度には、この研究課題のメインテーマである近代東アフリカにおけるアラビア語クレオールの言語動態に関する研究を文献資料の収集・分析によって十分に進展させ、国際学会での研究発表や論文出版を行うことでその成果を公開することができた。 これに加え、当初は予定されていなかったバンガラ語の資料の発見を受け、バンガラ語の言語特徴、バンガラ語とアラビア語クレオールの歴史的関係を明らかにし、国際学会での研究発表を行うことができた。 さらに、これまでの調査・研究成果をより大きな視点から捉え直した上でとりまとめ、その成果を2度のオープンセミナーの形式で公開することで、言語学以外の学問領域を専門とする研究者らと共有した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、主として平成26・27年度にかけてきたアラビア語クレオールおよびその成立背景に関する補足的文献調査をオーストリア・エジプト・スーダンにて行う。現時点では、平成25年12月以来の南スーダンでの紛争を受け、当初の予定では本研究課題にとって重要であった南スーダンでのフィールドワークが延期されているが、現在南スーダンでの政情はやや改善されつつあり、調査が可能となった場合には、南スーダンでのフィールドワークを遂行する。 また、これまでに行ってきたアラビア語クレオールの成立に関する歴史社会言語学的研究を、平成28年度に予定されている文献調査によって補足したものを、最終的に日本言語学会学術大会にて発表する。さらに、これまでの研究をとりまとめ、和文査読誌『境界研究』および英文査読誌 Journal of Nilo-Ethiopian Studies に投稿する
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