研究課題
本年度は、interleukin (IL)-1ファミリーに属する炎症性サイトカインであるIL-18と、その受容体との複合体構造を解明し、成果として報告した。概要としては、IL-18単体、IL-18/IL-18Rαの2者複合体、及びIL-18/IL-18Rα/IL-18Rβの3者複合体について、X線結晶解析法を用いて構造決定を行った。得られた3者複合体構造は、IL-1ファミリーに共通な2次受容体認識機構を証明した。この結合様式は、溶液NMRを用いた相互作用実験や、SAXSを用いた溶液構造の解析からも支持された。また、各受容体は3つの免疫グロブリン様ドメイン (N末端からD1, D2, D3) から構成されていたが、2者界面におけるIL-18Rα-D1のコアジスルフィド結合の欠失や、3者界面における両受容体D2のdストランドの欠失を明らかにすることで、IL-1RAcPと対照的なIL-18Rβの特異的な2者複合体認識を説明した。さらに、IL-18と各受容体の変異体を用いて相互作用実験、細胞機能実験を行うことで、複合体形成とシグナル伝達に係わる重要な残基を確定した。得られた情報は、自己炎症性疾患やアレルギーなどに対する治療薬(低分子化合物、及び生物製剤)の設計に寄与すると期待される。一方で、2量化能を有するタンパク質 (ドメイン) とのキメラを用いたヘテロTIR複合体の機能・構造解析に関しては、各タンパク質の精製には成功したものの、3者以上の高次複合体形成は確認できなかった。そのため、細胞実験によりリンカー長のスクリーニングを行った。
2: おおむね順調に進展している
新規対象であるTIRドメインのヘテロ複合体構造に関する研究ついては未だ遂行中であるが、炎症性サイトカインであるインターロイキン18とその受容体との複合体構造を解明し、その成果を纏めることが出来た。
新規課題であるTIRドメイン複合体の解析に関しては、タグタンパク質とTIR間のリンカー長を最適化することが出来ている。最適化前のコンストラクトについては精製に成功しているので、同じ手順で最適化後のコンストラクトの精製を進め、高次複合体の形成と構造解析を試みる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Nat. Commun.
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http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/141215_1.html