前年度の研究から発展し、IL-18前駆体の構造機能解析を進めた。炎症性サイトカインであるIL-18は感染防御において重要な役割を果たすが、その過剰産出はアレルギーや自己炎症性疾患といった病気を引き起こす。IL-18は不活性な193アミノ酸残基の前駆体として細胞内に発現し、病原体感染や細胞ストレスを引き金として切断され、157アミノ酸残基の機能型リガンドとして細胞外に分泌される。我々は、IL-18前駆体のNMRスペクトルを測定し、これが機能型のものと全く異なることを発見した。また、前駆体のNMRスペクトルを測定しながら切断反応を行うと、ほぼ100%反応が進行した状態でも「機能型(成熟型)」と「前駆体型」2つのスペクトルが混在した状態が観測された。さらに、 別々に調製した前駆体のペプチド領域と成熟型IL-18の相互作用をNMRにて解析すると共に、ヒト細胞株を用いた系において前駆体ペプチドがIL-18シグナルの阻害活性を有することを見出した。今後は本相互作用の解析を進め、より強いIL-18結合能とシグナル阻害活性を有する非天然ペプチド配列を同定する。 一方で、当初目的としたTIRドメインの複合体構造解析に関しては未達成となった。TIRは、IL-1/IL-18受容体とToll様受容体(TLR)の細胞内ドメイン、及びその下流分子に見られる構造で、TIR同士で複合体を形成して下流へのシグナル伝達を行う。しかし、その相互作用は非常に不安定で、ヘテロ複合体を精製することは難しかった。本研究では、FKBP12、及びmTOR(FRB)とTIRを融合させることで、Rapamycinで強制的に誘導したTLR2(TIR)とTIR1(TIR)の2量体精製に成功したが、結晶化などのためリンカーを最適化するとタンパク質の安定性が著しく低下するということも有り、大量精製と構造解析には至らなかった。しかしながら、この系を基にして細胞ベースの評価系を確立し、リガンド未知のTLR10(TIR)なども用いてその検証を行うことが出来た。
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