研究課題
初年度に国内で3ヶ月に亘る野外調査を実施し、研究上重要な甲虫資料の収集に務めた(沖縄県八重山諸島、鹿児島県奄美大島、北海道、北関東、その他)。その結果として、研究上重要でありながら得難いホソヒゲハネカクシを筆頭に700点を超える分子抽出用標本を得るに至った。これらのサンプルを用いて、分子系統樹作成のため28S、16S、18S、CADといった領域を用いて分子実験も進めている。また、フィールド自然史博物館(米シカゴ)において標本調査を2週間行い、得られた成果を基にして、世界のシリホソハネカクシ族の予備的な系統樹を構築し、口頭発表を行った。同時に主に日本産種を扱った分類学的研究を進めており、上記の調査で得られた標本も活用しながらヒゲブトハネカクシ亜科(ヒゲブトハネカクシ属、チビシリアゲハネカクシ属、コバネヒメハネカクシ属)に関する論文投稿の準備を行っている。また、海浜性ヒゲブトハネカクシ(ヒゲブトハネカクシ属Emplenota亜属およびTriochara亜属)の系統樹作成も実施し、既に学術誌への載録が決定している。共同研究では、マルケシハネカクシ族およびズングリハネカクシ族に関する成果を既に論文として公表した。さらに、異分野の工学の研究者(東京大学)らと共同研究を行い、ハネカクシ科甲虫が後翅を緻密に折り畳む過程の詳細を明らかにすることができた。この成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載され、国内ではNHK、読売新聞、日刊工業新聞、日経産業新聞ならびに静岡新聞で報道された。このように初年度は分子材料の収集ならびに解析、分類学・系統学的研究に関する論文発表、異分野との共同研究をバランスよく行い、成果を公表することができた。以上のことから、当初の研究計画よりも順調に推移している。次年度以降はさらに解析を進め、複数の刊行論文を公表できる見込みである。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた野外調査では大成功を収め、研究上必要であるにもかかわらず得るのが極めて困難な分類群を含め、ほぼ全て入手することができた。また、分析、投稿論文作成、共同研究の進捗状況も想定以上に順調に推移している。
次年度は初年度の研究を概ね踏襲する予定であるが、予想外に早く必要な分子材料が得られてしまったため、野外調査の比重を当初計画より大幅に減らし、本格的に分子・形態を用いた系統樹作成に着手する方針である。また、分類学的研究に必要な標本も概ね手元に揃っており、分類群毎に論文作成を進めたい。
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