研究実績の概要 |
本格的にシリホソハネカクシ亜科群に関する分子実験を開始した。様々なプライマーを試すことで、成功率は未だに高いとはいえないものの、複数の領域でシーケンスを行った(28S, CAD, 18S, 16S, COI)。中でも昨年度に試験的に分子実験を行い結果が出ていなかったCADの領域に関しては解析に支障のない波形が得られつつある。しかしながら、ハネカクシ上科を網羅する系統樹作成を目標にしているため、アライメントなどを含めた各項目で良い結果が生まれない場合が多く、順番に課題を解決していく必要が生じている。 また、形態に基づくシリホソハネカクシ族の系統解析も継続して研究を行った。世界最大のハネカクシ・コレクションを有する米国シカゴのフィールド自然史博物館から解析用の標本を一式借用した。これらの標本および手元の標本を用いて、乾燥標本の写真撮影および観察を行っているほか、詳細な形態を観察するためのスライド標本作成も平行して行っている。 分類学的研究として、日本産ヒゲブトハネカクシ亜科(ヒゲブトハネカクシ属)に関する研究内容をまとめ、査読付き論文を2編発表することができた。内1編は68ページに亘る包括的な成果(モノグラフ)になった。昨年度の調査で得られた標本も当該論文中で使用している。 本年度からハネカクシの進化、起源および形態進化史に迫るため、直接的な証拠となる化石を扱う古生物学的研究を行っている。初年度でありながら論文を3編掲載することができた。特にイトヒゲニセマキムシ亜科とメダカオオキバハネカクシ亜科については、白亜紀後期のミャンマー産琥珀からそれぞれ亜科初となる化石を発見し、白亜紀研究の専門誌である「Cretaceous Research」誌上で2編の論文として発表した。
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