本研究では、4値位相変調コヒーレント状態を、従来の光の位相振幅を測定するようなホモダイン・ヘテロダイン測定に比べ良い誤り確率で識別するための測定系の開発を行うことを目的としている。このような優れた誤り確率で状態を識別できるような測定系は、現在のレーザー光を用いた光通信のさらなる大容量化には必要不可欠である。開発した測定系は、光学状態の位相や振幅を変調する変位操作、光の最小単位である光子が存在するかしないかを判定する光子識別器及び測定結果に応じたリアルタイムフィードバックによって構成される。28年度は光子検出器からの測定結果に応じたフィードバックシステムを構築し、その測定系の評価を行った。当初の研究目的では、4状態を識別することを目的としていたが、研究の進捗状況から、2状態識別を行うための実験を行い、誤り確率の観点から測定系の評価を行った。その結果、従来のホモダイン・ヘテロダイン測定に比べ良い誤り確率で状態識別が可能な測定系を実現することに成功した。本研究で開発した光子検出器とその出力に基づいたリアルタイムフィードバックシステムは、状態識別のみならずに、今後の量子情報処理において重要な技術となることが期待される。 また変位操作と光子検出器からなる測定系が、コヒーレント状態の状態識別のみならず、位相推定においても有効であることを実験により実証した。その成果はPhysical review Aに掲載されている。また同測定系が、コヒーレント状態の重ね合わせ状態で記述できるような射影測定になっていることに着目し、従来の物理量に捕らわれない非自明な測定基底への射影測定を実現することに成功した。
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