研究課題/領域番号 |
14J02729
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐俣 文平 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / ドパミン神経細胞 / 細胞移植 / 細胞選別 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病に対するヒト多能性幹細胞を用いた細胞移植治療法開発を目指し、1.ドパミン神経前駆細胞マーカーによる細胞選別技術の開発と2.既存薬剤投与によるドパミン神経前駆細胞の生着促進技術開発を掲げ研究を実施した。 1. ラミニン511-E8コーティングを施したディッシュ上で12日間培養したヒトES細胞(KhES-1)もしくはiPS細胞(1039A1)を抗LRTM1抗体で選別後に16日間培養を行うと、LRTM1陽性分画の約45%がTH陽性の成熟ドパミン神経細胞に分化することが分かった。本細胞を6-OHDA投与によって作製したパーキンソン病モデルラット脳内に移植し、3ヵ月後に生着細胞の評価をした。その結果、LRTM1陽性群の約25.9%がTH陽性の成熟ドパミン神経細胞に分化したのに対し、未選別群では約0.3%だけであった。本研究成果は、単一マーカーによる細胞選別でドパミン神経前駆細胞が濃縮できる一方、造腫瘍性細胞を取り除けることを明らかにした点である。移植実験を通して細胞選別の有用性が示せたことは、今後の細胞移植治療の発展に寄与するものと考えられる。 2.他家移植または異種移植の際に免疫抑制が必要となるが、その副作用によりホストもしくは移植片への影響が無視できない(Guoら、2007年)。今回の実験では最初に、移植細胞に対する薬剤の有効性を評価するため、免疫抑制が不要なX連鎖重症複合免疫不全症ラットを用いた評価系を確立した(Samataら、2015年)。本研究成果は、免疫抑制が不要なモデルラットを作製することで、薬剤の有効性を適切に評価できる実験系を構築した点にある。これはパーキンソン病のみならず、様々な分野で汎用性があるという点で医学研究の発展に寄与するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ラミニン511-E8を用いた分化誘導法(特許出願)とLRTM1を用いた細胞選別技術(特許出願)を組み合わせることで、ドパミン神経前駆細胞を濃縮することに成功した。LRTM1陽性分画をパーキンソン病モデルラット脳内に移植すると、移植後3ヵ月の時点で腫瘍化は認められず、移植片の約1/4が成熟ドパミン神経細胞に分化することが示された(現在論文投稿準備中)。 2.X連鎖重症複合免疫不全症ラットを用いた細胞移植実験系を構築した。これにより細胞移植後の免疫抑制の必要性がなくなり、移植片を適切に評価することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
LRTM1を用いた細胞選別でドパミン神経前駆細胞の濃縮に成功した。今後は移植細胞の有効性を明らかにするため、パーキンソン病モデルラットを用いた、長期間の運動機能評価を実施する予定である。
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