研究課題/領域番号 |
14J02735
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
沼澤 宙朗 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | AdS/CFT対応 / エンタングルメント / ゲージ理論 |
研究実績の概要 |
AdS/CFT対応はAdS時空上の超弦理論と共形場理論の双対性であるが、近年、共形場理論の量子エンタングルメントを用いて時空を構成する試みがなされている。それを踏まえて、時空の構成に向けて量子エンタングルメントの定量化であるエンタングルメント・エントロピーの解析を行うことは重要な問題である。
本研究ではまず、超弦理論におけるエンタングルメント・エントロピーの定量的な評価を行った。この問題はブラックホールのエントロピーの弦理論的効果の理解につながるものとして90年台から興味をもたれていたが、定量的な評価を行った研究は存在しなかった。エンタングルメント・エントロピーは紫外発散を持つが、超弦理論は紫外有限な理論であるため、物理量は紫外発散を持たないはずである。そこで、本研究は超弦理論におけるエンタングルメント・エントロピーの振る舞いを調べ、確かに有限になっていることを示した。
また、代表的なAdS/CFT対応におけるCFT側の理論は超対称ゲージ理論であるが、ゲージ理論においては自然なエンタングルメント・エントロピーの定義というものは存在しない。そこで、本研究では格子化された時空上のゲージ理論のエンタングルメント・エントロピーの定義を一つ決め、その定義がエンタングルメント・エントロピーの満たすべき性質を満たしていることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず当該年度において、私は高柳氏との共同研究で、超弦理論におけるエンタングルメント・エントロピーを解析し、それが場の理論で起こる紫外発散は存在せず、有限になることを示した。この計算は、問題設定自体は10年以上前から議論されていたにもかかわらず、分配関数の計算に関する技術的な困難があった。にもかかわらず、今回の研究では変形の自由度を導入することでこの問題を解決した。さらに、私は青木氏らと共同で、格子ゲージ理論におけるエンタングルメント・エントロピーの定義について研究したプレプリントを出版し、ゲージ理論においてエンタングルメント・エントロピーが定義できるのかどうかという重要な問題の解決に向けた進展をもたらした。以上のような成果を得たことで、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
共形場理論からの時空の導出に向けて、申請書に記入した通りテンソルネットワークからの時空の導出の研究を行う予定である。対称性に基づく考察から、時空の各点に付与された波導関数と、境界の共形場理論における境界状態の間に関係があることが期待される。各点の上に配置された波導関数の間には情報幾何学的な距離が定義できるが、その距離と時空の距離の間には関係があると期待している。これらのアイディアを元に、古典的な時空の導出におけるラージN、強結合極限の役割の解明を行う予定である。
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