本研究の主目的は、ナノライトの結晶化のタイムスケールを求めることで、新燃岳2011年噴火の火道浅部で起こる噴火様式の分岐条件を調べることである。そこで平成26年度では、主に熱分析測定と化学組成の測定、空間群の決定を行った。 熱分析測定から火山ガラスの冷却速度を求めるためのGeospeedmetryを適用すること、そしてナノライトの結晶化潜熱を決めるために、ミュンヘン大学(LMU)で熱分析測定をおこなった。新燃岳2011年噴火噴出物は結晶量がガラス量に比べて多く含まれていたことから、典型的なピークデータを取得することは難しく、現在データの解析作業を進めている。 また、ナノライトがどのような結晶なのか、ということを調べるために、化学組成と空間群の決定を行った。ナノライトの結晶の化学組成・空間群は、相図からナノライト結晶化の条件を推定するのに重要な情報であり、今後ナノライトを実験的に生成するにあたっても、実験条件や生成物の評価をするための重要なパラメータである。ナノライトのサイズ(最大で約2ミクロン)は、加速電圧15kVにおけるX線発生領域よりも小さく、一般の火山岩研究で使われているEDS分析では測定できない。そこで異なる二つの方法で分析を行った。一つ目は15 と 20 keV の加速電圧で測定したマッピングのデータを多変量解析することで、各ピクセルのEDSスペクトルを定量する方法、二つ目は低加速電圧(5-8kV)でも大面積SSD検出器を用いることで実用的なカウントレートを得る方法である。両者の結果はほぼ同じであり、斜長石・輝石ナノライトの定量分析ができた。また上記の作業を進めている中で、数十nmの輝石・Fe-Ti酸化物のウルトラナノライトが含まれていることが明らかになった。TEM分析を行い、これらの結晶相の同定をすることができた。
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