本研究の目的は、水上マーケットという多様な意味をもつ市場と、それが開かれるタイのチャオプラヤー・デルタ海岸部の運河沿岸集落の人と空間を対象に、生業の1つとして商業・流通業に携わる商人(兼住民)の商実践と、そこで生成する共同のあり方を、人類学的なフィールドワークの手法を用いて明らかにすることである。その際、グローバルかつ国家的な時空に位置付けたうえで、運河沿いの社会との関連や人びとの微細な営みとして、商実践や人間・社会関係の形成を分析する。それを通じて、タイの村落社会研究の中で見落とされてきたデルタ海岸部の運河集落の社会経済の実態を解明し、デルタの自然と運河開発の相互作用の中でどのような環境が形成されているのか、そのような環境、空間において、人びとはどのように人間・社会関係を築いているのか、という自然と技術、人工物と社会性のかかわりという、人類学的な課題も問い直す。 本年度は、昨年度まで整理・分析を進めた調査データをもとに、投稿論文と博士論文の執筆を進めることを計画していた。投稿論文については、執筆し現在査読中である。
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