研究課題/領域番号 |
14J02779
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 信吾 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 第一世代星 / 星形成 / 宇宙の構造形成 / 数値シミュレーション / 宇宙物理 |
研究実績の概要 |
本研究では、標準宇宙モデルが与える現実的な宇宙の初期状態から出発してその後の宇宙の構造形成を数値シミュレーション上に再現し、宇宙で最初に誕生する第一世代天体の形成過程と性質を明らかにする。最も重要な性質は天体の一生を決定する質量であり、このパラメータを理論的に明らかにすることが目標となる。得られた結果を用いて未だ不明な宇宙の初期進化を考察することで、2020年代に稼働が予定されている次世代望遠鏡による観測可能性を探る。 今年度は、大規模な数値シミュレーションより多数の第一世代天体を取得し、それらの多様な形成過程の系統的に解析することで、宇宙早期の天体形成過程における一般的な性質を求めた。得られた成果は論文にまとめて発表しており、国内研究会4件と国外研究会1件で研究発表を行った。 1. 大規模な数値シミュレーションより、1500例以上の第一世代天体を取得した。これはこれまでのサンプル数 (約100例) を大きく上回っており、天体形成過程の系統的特徴を調べることが可能になる。サンプルを分割しても統計的性質は変わらなかったことから、十分なサンプル数に達していることを確認している。 2. 得られた第一世代天体を系統的に解析したところ、(1)天体質量は太陽の10から1000倍まで幅広い値をとる一方で (2)太陽質量の200-300倍に分布が集中しており、(3)典型的な第一世代天体の存在が初めて明らかになった。 3. また先に誕生した第一世代天体の影響を受けて形成過程が変化した第二世代天体が宇宙初期には混在している。今回得られたサンプルを第一・第二世代天体に分類したところ、(1)早期段階に誕生する天体の半分が第二世代天体となるが、(2)宇宙進化が進むにつれてその割合は減少していくことが明らかになった。また(3)天体の質量分布は第一世代より第二世代天体の方が大質量側に現れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模数値シミュレーションによる第一世代天体の大規模サンプル構築は予想以上に進み、天体形成の系統的性質の詳細な解析結果を論文として報告した。また第二世代天体の形成過程・性質も明らかにでき、初期宇宙の天体形成全体における影響を評価することができた。第二世代天体には2つの形成過程が存在するが、今年度はその一方の研究が完了しており、来年度でもう一方の性質を明らかにすることは十分可能である。超大質量ブラックホール形成を検証するための候補領域も今回の計算サンプルから見つけており、研究期間終了時までには当初の計画達成が十分見込める。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の数値シミュレーションより構築した大規模サンプルを用いて、宇宙初期の天体形成を体系的に理解する。第二世代天体にはあと一つ考慮すべき形成過程が存在するため、天体形成の環境依存性をモデル計算より求め、大規模サンプルにおける役割・影響を評価する。超大質量ブラックホールの形成過程を数値シミュレーションより調べ、大規模サンプルにおける出現確率を求めることで、観測量と比較・検討する。最終的に大規模サンプルにおける天体形成を網羅することで、次世代の大型望遠鏡による観測可能性を議論する。
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