単色性の良い波長可変レーザー光とドップラーフリー分光法を併用し、電子遷移を回転線まで分離して観測すれば、分子の励起電子状態において、分子の幾何構造に関するstaticな情報と、状態間相互作用ひいては化学反応に関するdynamicな情報の両方が得られる。本研究では多原子分子ラジカルに注目し、具体的な系として硝酸ラジカル (14NO3) の可視吸収帯について高分解能レーザー分光研究を遂行した。 15100 cm-1付近に存在する振電バンドについては、基底電子状態の回転エネルギー準位構造と、自作した電磁石を用いて観測した回転線のゼーマン分裂とを併せることで、以前の我々の報告よりも回転量子数の大きな範囲までの回転線の帰属に成功した。その結果、励起電子状態の実効的な分子定数を見積もることに成功した。この成果は、平成27年度に学術論文としてまとめ、発表した。 15850 - 16000 cm-1の領域に存在する複数の振電バンドについては、観測を続けているとともに回転線のゼーマン分裂を観測して確実な解析を進めている。
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