本研究では、FoxO3aによる大腸癌幹細胞制御機構と転移・再発における役割を明らかにすることを目的として、FoxO3aノックアウトマウスとノックインマウスをそれぞれ作製し、それぞれの遺伝子改変マウスと腸管腫瘍マウスモデルとの交配を行うことで、腸管腫瘍の発生や悪性化進展におけるFoxO3aの役割の解析を行った。前年度には、それ以前に作製していたFoxO3aコンディショナルノックアウトマウスと腸管腫瘍マウスとの交配を進め、また、予定通りにFoxOa3aコンディショナルノックインマウスも作製が終了したため、同時に腸管腫瘍マウスとの交配を進めた。本年度は、腸管腫瘍の発生や悪性化進展について、病理学的手法と生化学的手法を用いて評価した。腸管上皮でFoxO3aをノックアウトしても腸管腫瘍の発生数や腫瘍径などに有意な変化は認めなかったが、ノックインでFoxO3aを持続活性化させると腸管腫瘍の発生数が減少し、また、腫瘍径も縮小することが分かった。b-cateninとFoxO3aを共に活性化させると大腸がんが浸潤・肝転移し悪性化進展する可能性が指摘されていたが、in vivoではFoxO3aを活性化させると腫瘍の発生や進展を抑制することが分かった。また、FoxO3aを強力に活性化誘導すると、致死性の重篤な消化器障害を認めた。FoxO3aによって腸管上皮幹細胞がアポトーシスを起こして枯渇することが原因と示唆される。以上の結果を踏まえると、腸管腫瘍の形成におけるがん幹細胞制御にFoxO3aが重要な役割を果たしていることが示唆され、引き続き詳細なメカニズムにつき解析を行っていく予定である。
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