本研究では、ザンジバル諸島の生態資源を地域社会がどのように利用・管理しているかについて、一般住宅の建築様式ならびに建材の変遷に着目して長期のフィールドワークをおこなってきた。ザンジバル諸島が発祥とされる、東アフリカ一帯に影響をあたえたスワヒリ文化の成立を理解するうえで、本研究は地域研究の重要な一端を担うものである。 フィールドワークでは、ザンジバル諸島のペンバ島北西部にG地区(人口約3000人)から選抜した3村について、村内の全家屋の建設年・建設者・増改築歴・建材・世帯構成員の聞き取り調査をおこなった。地域内に現存する家屋の全体像を捉え、家屋の定型および共通する要素(間取り、装飾、用途)の把握を、聞き取り調査・実測調査・参与観察をとおしておこなった。村内は人口増加や、道路建設などの影響で急激な宅地化が進むなかで、住人が信仰するイスラームで重視されるプライバシーを確保した、快適な住環境がきずかれていることがわかった。これらの家屋には、ザンジバルが歴史的に関係が深い、アラブ諸国でも同様にみられる要素が多分に含まれており、ザンジバルで入手出来る建築材料を活用して建設される、風土建築/バナキュラー建築であることが確認できた。 ザンジバルで確認できたバナキュラー建築は、島内で入手出来る建材の代表格であるマングローブ、チョウジ、貝殻が利用され、それらは有効活用するための知識を地域内で共有することで、島という限られた生態資源を島民が活用する貴重な事例である。
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