研究実績の概要 |
正二十面体準結晶における原子的構造、フェイゾン乱れ、そして低温構造相転移の有無を明らかにする目的で、Cd-Gd, Cd-Dy, Cd-Tm、Cd-YbとZn-Sc正二十面体準結晶を調べた。 【原子的構造】原子的構造が解明されているCd-Yb準結晶を除くCd-Gd, Cd-Dy, Cd-Tm及びZn-Sc準結晶について、放射光をもちいて得た構造因子をつかい構造解析を行った。いずれもCd-Yb準結晶と同型であると判明したが、一部の希土類サイトにおいてケミカルディスオーダーが存在することがわかった。これによってCd-Yb準結晶の合金組成が他の準結晶と異なる問題への説明を与えた。 【フェイゾン乱れ】放射光をもちいてZn-Sc準結晶におけるフェイゾン乱れを評価した。まず回折ピークシフトからフェイゾンマトリックスを決定しフェイゾン歪みの評価した。次に、X線散漫散乱の絶対値測定からフェイゾン弾性定数を決定した。そして、原子的構造に基づきフェイゾン乱れによる散漫散乱の再現に成功した。 【低温構造相転移の有無】ブリッジマン法や自己フラックス法をもちいてCd-Gd、Cd-Yb及びZn-Sc準結晶の単結晶塊を作成し、10Kから室温の温度域での電気抵抗率を測定した。この結果、Cd-Yb準結晶において、約60から80Kの温度域でヒステリシスを伴う抵抗異常を観測した。そのほかの準結晶において抵抗異常は観測されなかった。Cd-Yb準結晶について、80Kから室温までの温度域における放射光X線回折実験を実施し、回折ピークプロファイルの可逆的温度変化:降温過程では回折ピークの半値幅が増加し、昇温過程ではこれが減少すること、を観測した。これは相転移の前駆現象を捉えたものと考えられる。本研究により80K以下での相転移を示唆する実験結果を得た。
|