研究課題/領域番号 |
14J02940
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄大 専修大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 行為 / 理由 / 反因果説 / 反心理主義 / ジョナサン・ダンシー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、行為の哲学における反因果説と呼ばれる立場を擁護することによって、反自然主義的な行為観を構築することである。そして反因果説を擁護するために、行為の「理由」に関して反心理主義と呼ばれる立場を擁護するという手段をとる。 反心理主義は、ジョナサン・ダンシーが初めて積極的に推し進めた立場である。それは、多くの論者が行為の理由を行為者の心的態度と考えるのに反して、行為の理由はそうした態度の対象であると考える。 平成26年度は、ダンシー以外にも、同様の考えを擁護する他の論者たちの議論をサーヴェイし、それらがなお解決していない問題を解決するために、独自の考えを形成していった。その問題とは、行為者の関連する信念が偽である場合に、行為の理由を態度の対象であると考えることは難しいという問題である。本研究は、行為の理由に関する形而上学的な次元と、行為の説明に関する言語学的次元とを区別することで、この問題に答えようと試みた。その結果は「偽なる信念における行為の理由」という題で日本哲学会第46回大会にて発表された。 また、反心理主義の擁護論は主に以下の二つの主張から構成される。1. 行為の理由の二つの機能、すなわち説明の機能と正当化の機能とが、同一の存在者によって担われうる。2. 心的態度は、行為を正当化する機能を担いえない。反心理主義の擁護論の力点は主に1に置かれ、本研究の努力もそこに多く注がれるが、多くの場合自明視されがちな2に関しても、その根拠を確かにする必要があるとということが研究の途上で明らかとなり、このことは科研費繰越の事由となった。それが主に関わる問題は、心的態度の一種である欲求は本当に正当化の機能を担いえないのかどうかということであり、その結果は「行為すべき理由は欲求に基づくか」という題で日本科学哲学会第47回大会にて発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上に示した、反心理主義の擁護論の二つの主要な主張のうち、1「行為の理由の二つの機能、すなわち説明の機能と正当化の機能とが、同一の存在者によって担われうる」に関しては、期待通りの成果が得られた。すなわち、反心理主義の最大の問題とされる信念が偽のケースに関する取り扱いに関して、一定の解決策を得ることができた。 しかし2「心的態度は、行為を正当化する機能を担いえない」の主張の擁護に関しては、なお不十分な点が残った。だが欲求の正当化機能に関する議論状況を把握し、さらに何を解決すれば当初の問題を解決できるかが明らかになった点では、総合的には「順調な進展」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
反心理主義を擁護する基本線は、本年度において整えられた。次年度以降は、さらにそこから広がる議題が取り組まれる。まずは反心理主義は心理主義に対して対抗する立場として提出されたが、さらには第三の選択肢として選言説と呼ばれる立場も存在する。選言説はもともと知覚の哲学において誕生・発展したアイデアであり、知覚の哲学との比較研究もなされる。 また、反心理主義の擁護論は主に上述の主張1「行為の理由の二つの機能、すなわち説明の機能と正当化の機能とが、同一の存在者によって担われうる」に訴えてなされるが、本研究は反心理主義の論拠はそうした規範性関わる論点に限られず、そして別の論拠こそ反心理主義の核心をより捉えていると考える。それはふつう行為の説明は行為者の視点からなされるという説明の視点性に関わる論点である。 以上が26年度以降に推進されるべき研究内容であり、それはすでに進行されている。
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