研究課題/領域番号 |
14J02941
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
前島 美保 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 歌舞伎音楽 / 上方 / 近世 / 近代 / 音楽演出 / 囃子方 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、上方歌舞伎の音楽演出に関するいくつかの側面から併行して調査研究に取り組んだ(①~④)。 ①京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターにて共同研究「近代上方の歌舞伎音楽」のコーディネーターを務めた。杵屋富造の関連資料調査、上方の附帳の読み合わせ等を進めてゆく中で、昭和期に活躍した杵屋胡金吾(1921~2009)の遺品を調査できたことは大きな収穫であった。資料は芝居に関するものと長唄や舞踊に関するものとに大別されるが、前者には附帳等の譜本類やオープンリール等の音声資料があり、中には杵屋富造関連資料と重なるものを含む。内容の詳しい調査と考証を進めることが今後の課題となる。 ②近世後期上方歌舞伎の囃子方の手がかりを求め、江戸後期から幕末にかけて約80年間の役者評判記を収集し、囃子方連名の箇所を翻刻した(所蔵機関:東京藝術大学、早稲田大学演劇博物館等)。約150座分の翻刻からは上方の囃子方を数多く確認することができ、昨年度調査した顔見世番付や武内恵美子『歌舞伎囃子方の楽師論的研究』(役割番付に拠る)と照らし合わせると、近世後期の囃子方の出勤状況や座組の様子を包括的に把握することが可能となる。これらは近世から近代にかけての音楽演出を考えてゆく上でも基礎資料となるものであり、今後も継続調査を予定している。 ③元禄期上方歌舞伎の芝居歌について、『落葉集』と絵入狂言本の照合を行い、用いられた各場面と三味線の調弦の関係を考察した。この時期に用いられる芝居歌の調子が、場面ごとにある程度定まっていたことに着目し、その慣習が以後の長唄や舞踊曲にも影響を及ぼしている可能性を指摘した。以上は博士論文で触れたものだが、再調査・再検討の上、改稿した(「『落葉集』と絵入狂言本にみる芝居歌―元禄期上方歌舞伎の調子選択―」)。 ④「芝居囃子日記」に関連する資料の調査に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は共同研究を軸に調査研究を進めることができた。とくに当初想定していなかった近代の上方歌舞伎囃子方の遺品調査が叶い、音楽演出の変遷や伝承について検討する上で興味深い資料の発掘につながった。引き続き当該資料とその周辺の調査・整理を進めてゆきたい。 台帳や附帳の読み解きなど持ち越している課題があるものの、近世後期の役者評判記の翻刻作業や「芝居囃子日記」の精査等も含めて考えると、おおむね順調な進展があったものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
近代上方歌舞伎の囃子方に関する資料調査と考証が、次年度の課題になると考えられる。とりわけ附帳や音源資料の確認・考証には、一定の時間がかかることが予想されるため、計画的に行いたい。その上で史料を包括的に捉えながら、演目を絞り込み、音楽演出の変遷について考察を行う等、研究を進めてゆく。以上の研究成果は、学会で発表する等、公表する機会を設ける予定である。
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