研究課題/領域番号 |
14J02943
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永沼 伸顕 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | convegence rate / error distribution / Euler近似 / Crank-Nicholson近似 / Milstein近似 / Wong-Zakai近似 |
研究実績の概要 |
今年度は次の(A)と(B)の結果を得た. (A) Coutin-Qianの条件を満たすGauss過程により駆動されるd次元確率微分方程式の解をWong-Zakai近似を用いて近似した場合の収束の速さの上限を決定した.さらに,非整数Brown運動の場合にこの収束の速さが下限であることを示した.これら結果により,Wong-Zakai近似の誤差の収束の速さを決定することができた.この研究は研究計画の第1ステップであり,Wong-Zakai近似の重み付誤差の収束の証明という最終目標に対して一歩前進した. (B) 1次元非整数Brown運動によって駆動される1次元確率微分方程式の解に対して,Euler近似,Milstein近似,Crank-Nicholson近似により近似解の列を構成し,近似手法ごとに最適な収束の速さを決定し,さらに,重み付誤差の0ではない収束先を決定した.本研究は先行研究とは異なる手法 (以下,摂動法) を取ることで重み付誤差の収束先を解の方向微分を用いて表示した.この結果は,Neuenkirch-Nourdin(2007), Gradinaru-Nourdin(2009), Naganuma(2015+)を統一的に扱い,さらに拡張する.先行研究では確率微分方程式の解の表示から誤差評価を行うが,ドリフト項が0でない場合に,解の表示から誤差の解析を行うことは容易ではない.とくに近似手法として,Milstein近似やCrank-Nicholson近似などを採用した場合には計算を実行することは困難である.1次元ではあるが,ドリフト付確率微分方程式の近似解の挙動が分かったことは大きな進展であった.また,本研究は他の近似手法に対しても適用が可能であり,今後の進展が期待される.本研究は会田茂樹氏(東北大学)との共同研究である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,d次元確率微分方程式のWong-Zakai近似を用いた近似解に関して,重み付誤差の収束まで調べる予定であった.しかし,当初のアイデアではそこまで調べること難しく,収束の速さを決定するにとどまった. 一方で,1次元確率微分方程式の近似解の性質の摂動法を用いた研究が進んだ.これは当初想定されていなかった研究ではあるが,重み付誤差の収束を調べるという研究の趣旨に合致する.1次元ではあるがドリフト項のついた確率微分方程式の解の近似に関してその重み付誤差の収束が得られたことは大きな進展であった.
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今後の研究の推進方策 |
確率微分方程式の近似解の誤差の研究を摂動法を用いて進める. まずは,1次元の場合の研究を完成させる.本年度に得られた結果では,拡散係数の楕円性の仮定の下で重み付誤差の収束を示した.先行研究においては,楕円性の仮定を外した場合の結果も得られている.この状況を鑑みれば,拡散係数の楕円性の仮定なしで結論が成り立つという予想が立つ.まず,1次元の場合に,楕円性に関する仮定を外し,理論を完成させる. つぎに,摂動法を用いた多次元の確率微分方程式の近似解の誤差の研究を行う.今年度に行った1次元確率微分方程式への摂動法の適用により,この手法が多次元の確率微分方程式の近似解の誤差の研究にも応用可能であるという見通しがたった.最大の理由は,解の表示を用いずに誤差の研究ができるという点にある.多次元の場合には一般には解の表示が得られないため,従来1次元のときに行われてきた研究を応用することができない.もし,この研究が成功すれば,Wong-Zakai近似の重み付誤差の収束にも貢献すると考えられる.
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