研究課題
本研究では、SUS304オーステナイト系ステンレス鋼における変形誘起マルテンサイト変態の組織形成過程とその結晶学的特徴をEBSD及び放射光X線回折を利用した局所応力測定法を合わせて調べた。下記の通りの主な結果が得られた。熱誘起マルテンサイトおよび変形誘起マルテンサイト (応力・ひずみ誘起) の組織と結晶学的特徴を詳細に解析し、これらのマルテンサイト変態はオーステナイト→εマルテンサイト→α’マルテンサイトという順序であることを明らかにした。また、それぞれのマルテンサイトの形態についての相違も調べた。放射光X線回折を用いて引張変形中の多結晶母相オーステナイトの局所応力場を測定し、局所応力場が多結晶体中の場所によって大きく異なり、外部応力とはほぼ一致しないことを明らかにした。変形誘起マルテンサイト変態の各変態過程におけるバリアント選択を、組織及び結晶方位解析により調べた。その結果、オーステナイト→εマルテンサイト変態過程でのバリアント選択を、放射光X線回折を用いて測定した引張変形中の多結晶母相オーステナイトの局所応力場に基づいて解析した。一軸の外部応力場によってはバリアント選択が説明できなかった、一方、放射光X線回折を用いて測定した局所応力を用いるとバリアント選択が説明され、オーステナイト→εマルテンサイト変態を担うショックレー部分転位が受ける分解せん断応力成分の大小によって優先的に生成するεマルテンサイトのバリアントが決定されることを初めて証明したことは、特筆すべき成果である。以上の成果はSUS304オーステナイト系ステンレス鋼における変形誘起マルテンサイト変態時のバリアント選択を含む組織形成過程を、放射光X線回折を利用した多結晶体中の局所応力測定という先端的手法を用いて初めて明らかにしたものであり、学術上に寄与することができた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Materials Today: Proceedings 2S
巻: 2 ページ: S937-S940
10.1016/j.matpr.2015.07.436
巻: 2 ページ: S945–S948
10.1016/j.matpr.2015.07.438