研究課題/領域番号 |
14J02961
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
京極 博久 独立行政法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / 核小体 / 発生 / 脱核小体 / NPB |
研究実績の概要 |
以前の研究から,核小体を除去(脱核小体)した卵核胞期(GV期)のマウス卵母細胞は,正常に成熟するが,受精後の前核期の核中に核小体は形成されず,胚は発生を停止することが示された。また、成熟後のマウス脱核小体卵母細胞に核小体を戻すと胚は発生するが,前核期の受精卵に戻しても胚発生が回復しないことも明らかにされている。これらの結果は,核小体は受精後から前核期までの時期にのみ機能する可能性を示唆している。正常な前核期胚の核中に形成される核小体は,GV期の核小体と同様に緊密な形態をしている。2細胞期以降,この緊密な卵母細胞型の核小体の周囲から,体細胞型の核小体が形成され始め,胚盤胞では完全に体細胞型の核小体となる。 本研究では,前核中の核小体が,それ以降の胚発生に必須であるかを前核から核小体を除去することによって調べた。また,脱核小体した前核期胚から発生した胚に体細胞型の核小体が形成される可能性を探った。まず,顕微操作により雌雄両前核から核小体を除去した後,体外で発生させ,胚盤胞への発生率を調べた。また,2細胞期へと発生した胚を移植することによって産仔への発生を調べた。前核期で脱核小体した胚は正常に胚盤胞へ発生し,胚移植により正常な産仔を得た。次に,核小体の形成を確認するために,GFPタグのついた卵母細胞の核小体に特異的な蛋白質(NPM2)のmRNA,体細胞型の核小体に特異的な蛋白質(B23)のmRNAを用いたライブセルイメージングと体細胞の核小体に特異的な蛋白質(B23, UBF)に対する免疫蛍光染色を行った。前核期で脱核小体した胚は,発生過程で卵母細胞型の核小体を再形成することはなかったが、体細胞型の核小体を新たに形成した。以上の結果から,卵母細胞型の核小体は前核期以降の胚発生に必須ではないこと,卵母細胞型の核小体がなくとも胚は体細胞型の核小体を新たに形成することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた実験については,データを出し論文にまとめ上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,卵母細胞型の核小体は受精後から前核期の間の発生の非常に初期にのみ必須であることが示された。今後は,この時期に起こる胚の大きな変化(第二減数分裂,染色体の脱凝縮と前核形成,染色体の複製・再凝縮,第一有糸分裂)と核小体との関係を探る。
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