研究課題
これまでに申請者は、分娩後子宮において存在する老化細胞周囲にマクロファージが集積し、老化細胞の除去に関与していること、老化細胞の過剰な蓄積は子宮機能異常を誘導することを明らかにしている。本年度において、申請者は老化細胞の過剰な蓄積をもたらす子宮内微小環境の解明とその改善を試みた。まず、申請者が前年度までに確立した、老化細胞を過剰に蓄積するマウスモデルの産褥子宮において、炎症亢進性遺伝子クラスタの発現が顕著に増加していることが示された。さらに、このモデルマウスにおいてはエストロゲン応答性遺伝子の発現が顕著に増加している一方で、プロゲステロン応答性遺伝子の発現が低下していた。プロゲステロンは妊娠の維持において重要なホルモンであり、特に子宮内微小環境の調整に寄与する。そこで、この老化細胞が過剰に蓄積するマウスモデルに対して、申請者は分娩直後からプロゲステロンの投与を行い、その後の子宮内微小環境の変化を調べた。その結果、プロゲステロン投与群ではエストロゲン応答性遺伝子の発現が抑制されたほか、一部の炎症性遺伝子の発現の低下を認めた。このことから、プロゲステロンは子宮内微小環境を改善し、その結果老化細胞の過剰な蓄積を抑制する可能性が考えられた。以上から、申請者は老化細胞の過剰な蓄積の背景として、プロゲステロン/エストロゲンバランスの異常と、子宮内炎症の亢進が存在すること、プロゲステロンがその子宮内微小環境を改善する可能性があることが推測された。子宮内炎症の亢進や子宮内膜の菲薄は不妊の原因として知られており、これらが老化細胞の過剰な蓄積を引き起こしている可能性が考えられる。すなわち、この結果は新たな子宮内不妊因子としての老化細胞の可能性を示唆するものであると考えられ、未だに解明されていない部分が大きい女性不妊の詳細を明らかにするとともに、その治療法の確立に向けて寄与することが考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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JCI Insight
巻: 2;1(8) ページ: -
10.1172/jci.insight.87591