研究実績の概要 |
様々な金属イオンと架橋性配位子の組み合わせを検討し、主にプロトン伝導体の合成を行った。また本課題の目標である外部刺激によるイオン伝導挙動の応答を念頭におき、光を外部刺激として用いることのできる材料・構造の開発を行った。 合成スクリーニングを行った中、Cd2+イオン、1,2,4-トリアゾール、H3PO4からなる[Cd(1,2,4-triazole)2(H2PO4)2]の組成を有する配位高分子の合成に成功した。この配位高分子は二次元レイヤー構造を形成し、そのレイヤー上の水素結合を介してプロトン伝導特性を示す。その値は 1x10-6 S cm-1 (150℃)であった。この結晶状態の試料に対し、ボールミル処理を行うことによって、ガラス化の実験を行った。その結果得られた試料の粉末X線回折はブロードなハローのみ観察され、非晶質化していた。このサンプルのイオン伝導度測定を行ったところ、結晶状態と比較し二桁ほど高いプロトン伝導度を有することがわかった。この非晶質状態において示差走査熱量測定を行ったところ、80℃においてガラス転移点を、さらに150℃において結晶化が起こることを確認した。 次に目的である光応答性への展開を行った。本化合物の粉末ペレットにおいて4 GPaの圧力を四方から均等に印加することにより、ペレット全体が透明であるバルクガラスを得た。このバルク透明ガラスのプロトン伝導特性は150℃において7.4x10-6 S cm-1であり、これら特性より光を材料全体に透過させることができ、かつ比較的高いプロトン伝導特性を有する配位高分子ガラスを得ることができた。
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