研究実績の概要 |
まず、ダイレクトシークエンス法を用いて当院における骨髄異形成症候群(MDS)の症例の中で、MDSに特徴的な遺伝子異常(TET2, EZH2, ASXL1, CBL, DNMT3A, IDH1, IDH2, KRAS, SF3B1, U2AF35, SRSF2, RUNX1)を有する症例の検索を行った。変異を認めた症例については、AutoMACSを用いて患者検体(末梢血・骨髄液)よりCD34陽性細胞を分離し、サイトカイン(SCF, FLT3, IL-3, IL-6, TPO)を含む血球刺激培地にて数日間の前培養の後、エピゾーマルベクターを用いてリプログラミング因子(OCT3/4, L-MYC, SOX2, KLF4, LIN28, shP53)の導入を行った。計27症例の患者検体を用いてiPS細胞の樹立を試みたが、多くは正常クローン由来のiPS細胞であり、MDSの腫瘍クローンからの樹立効率は正常クローンよりも低いことが想定された。また染色体異常、遺伝子異常を有するiPS細胞を得ることができた場合にも、樹立とその後の培養に伴う付加的な染色体異常を認めた症例もあり、これらはその後の病態解析には適さないと考えられた。 これまでにiPS細胞樹立を試みたものの中で病態解析に適するiPS細胞としては、SF3B1の変異を有するMDS由来のiPS細胞(SF3B1-iPS)の樹立に成功した。SF3B1-iPSについては、iPS細胞培養における形態の評価、表面マーカーによる幹細胞性の確認を行った。また三胚葉へ分化可能であることを確認するために、免疫不全マウスを用いた奇形腫形成を試みている。今回樹立に成功したSF3B1-iPSはMDSの病態解析に有用なツールになると考えられる。
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