近年、ヘリカル型プラズマ実験装置において、運転領域の拡大を目指し中性粒子入射(NBI)加熱を用いたプラズマ着火が注目を集めている。京都大学のヘリカル装置ヘリオトロンJでは、従来の70GHz第2次高調波X-mode ECRHを用いた場合はトロイダル磁場が1.25Tに制限されてしまう。しかし、NBI加熱を用いたプラズマ着火では、0.63-1.25Tまでの運転領域の拡大が確認されている。ヘリオトロンJでは、NBIのプラズマとの接続長が短いため、あらかじめ2.45GHzマイクロ波によりシードプラズマを生成し、そこにNBを入射しプラズマ着火を行う。本研究では、ヘリカル装置においてNBI加熱による信頼性あるプラズマ着火の条件・物理過程を求めることを目的としている。 第2年度目の研究では、昨年度行えなかった、NBIパワーに対するプラズマ着火の依存性を調べるためプラズマ着火実験を行った。NBIパワーをおよそ400 kWから100 kW程度まで減少させたところ、NBIパワーがおよそ200 kWでプラズマが着火しなくなり、NBIパワーにしきい値が観測された。 本年度は、解析対象の粒子を原子から分子に拡張し、中性粒子遮蔽を取り入れた。数値解析結果と実験との比較を行った。実験より得られたプラズマの電子密度、蓄積エネルギー及びOVの発光強度の時間発展を再現するように粒子及びエネルギー閉じ込め時間を設定した。このパラメータを用いて、プラズマ着火のNBIパワーに対する依存性などの実験結果を数値解析により再現した。本モデルにより、NBIプラズマ着火には、(1)高速水素イオンの生成、(2)高速水素イオンによる電子の加熱、(3)電子による追加のガスパフの電離・解離の3要素が重要で、これらの正のフィードバックがプラズマ着火の支配的な物理機構であることが判明した。
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