これまで加齢に伴う血管伸縮性の低下には、血管Caチャンネルの発現量の低下が一因であることを明らかとしている。このことは、血管の伸縮に関わるレセプター・食品成分の応答性との関連を追究する上で、極めて有為な知見である。そこで、本研究の命題である「加齢と機能性食品成分の作用」を明らかとするため、週齢の異なるラットを用いて加齢と関連した食品成分の血管弛緩作用を評価した。 【1.抗動脈硬化作用を有する低分子ペプチドTrp-Hisの血管弛緩作用】8週齢WKYおよびSHRで認められた血管弛緩作用は、18週齢以上のWKYおよびSHRにおいて消失した。なお、Trp-Hisの血管機能改善作用はCaチャンネルの阻害により発現することから、すでに明らかとしている加齢に伴い血管Caチャンネルの減弱が、Trp-Hisの弛緩の消失の一因であることが考えられた。 【2.Ferulic acidの血管弛緩作用】Ferulic acidの血管弛緩作用はSHRにおいて加齢に伴い明らかに増強した。また、内皮を除去した血管においても弛緩作用が認められたことから、Ferulic acidは血管平滑筋細胞において作用発現することが明らかとなった。次いで、弛緩に関わる構造重要性に着目したところ、2-プロペン酸基およびメトキシ基の位置がFerulic acidをはじめとするフェノール酸類の血管弛緩作用に重要であることを明らかとした。さらにFerulic acid類が加齢血管平滑筋細胞においてCa流入系を阻害することで弛緩作用を発現する可能性を見出している。 本研究は加齢により機能低下した組織に対して血管弛緩性食品成分により作用発現/メカニズムが異なることを明らかとしたものであり、加齢状態を考慮した機能性食品成分の生体調節作用評価の重要性を示唆するものである。
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