アーベル多様体の数論的有限性に関して、前年度までに次の二つの重要な結果を証明していた: 1. 体の有限次拡大L/KとK上のアーベル多様体Aが任意に与えられたとき、AのK上のツイストで、L/Kで自明化されるようなもののK上の同型類の集合が有限であること。 2.代数体KとK上のアーベル多様体Aが任意に与えられたとき、AのK上のツイスト全体の集合に対して、Rasmussen-玉川の有限性予想が成立すること。特に、次元が6以下の場合、K上の潜在的CMアーベル多様体全体の集合に対して、Rasmussen-玉川の有限性予想が成立すること。 1は、偏極付で考える場合は自己同型群の有限性があるため容易であるが、偏極を考えない場合(したがって一般には自己同型群の有限性が確保されない場合)についてもツイストの有限性を示せたことは、アーベル多様体の基礎理論における基本的未解決問題を提示して証明した点で意義が大きい。また、2は、CMアーベル多様体全体の集合に対するRasmussen-玉川予想については小関祥康の先行研究によって証明が与えられており、また、次元が1の潜在的CMアーベル多様体全体の集合に対するRasmussen-玉川予想については、Abbey Bourdonの同時期の独立研究によって証明が与えられていたが、これを次元が6以下の潜在的CMアーベル多様体全体に対して付加条件なしで証明したことは、当該分野における意義が大きい。 本年度は、これらの結果を一つにまとめた論文「On finiteness of twists of abelian varieties (アーベル多様体のツイストの有限性について)」にさまざまな技術的な修正や改良を行い、最終的に国際的学術雑誌に投稿した。なお、当該論文に関しては、未だ掲載確定となっていないため、下記の「13.研究発表」の「雑誌論文」欄には記載していない。
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