研究課題/領域番号 |
14J03075
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
鳴海 麻衣 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | カルレティキュリン(CRT) / SiglecH / シナプス除去 / 糖転移酵素 |
研究実績の概要 |
本年度申請者は1)マウス脳内の6-siayl-LewisC構造に関する研究成果を論文に発表し、2)6-siayl-LewisC構造に結合するレクチンの同定に取り組んだ。また、3)6-siayl-LewisC構造付加蛋白質の候補であるカルレティキュリン(CRT)の神経細胞内での局在を詳細に解析し、4)6-siayl-LewisC構造の生合成に関わる糖転移酵素の同定を進めた。 2)6-siayl-LewisC構造に結合するレクチンの同定:申請者は大阪大学理学研究科深瀬研究室と名古屋大学医学研究科木山研究室との共同研究により、ミクログリア特異的レクチンであるSiglecHと6-siayl-LewisC構造との結合を示唆する結果を得た。結果より、SiglecHと6-siayl-LewisC構造間の相互作用がミクログリアによるニューロンの貪食を促進し、CRTによるニューロン貪食の誘導に拍車をかけている可能性が浮上した。 3)CRTの神経細胞内での局在:生化学的手法と初代培養ニューロンの免疫染色によりCRTがニューロンの細胞質だけでなく樹状突起シナプスに発現していることを確認した。本結果より、6-siayl-LewisC構造付加CRTが発生期のミクログリアによるシナプス除去に関与する可能性が示唆された。 4)6-siayl-LewisC構造の生合成に関わる糖転移酵素の同定:マウス脳で6-siayl-LewisC構造の合成に関わると考えられる糖転移酵素の同定は、それらの遺伝子発現抑制による6-siayl-LewisC構造現象の生理的意義を研究する為に必須である。クローニングした糖転移酵素遺伝子をN2A細胞に導入し過剰発現させた。糖転移酵素過剰発現細胞の糖鎖解析を行い、6-siayl-LewisC構造合成に関わる糖転移酵素を同定しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的:6-sialyl-LewisC構造付加CRTの脳内での生理的機能の解明について、 1)6-sialyl-LewisC構造付加CRTの生理機能の解明は既存のCRTコンディショナルノックアウトマウス(CRT cKOマウス)の導入を進めており、導入後速やかに実験に取りかかれる。 2)6-sialyl-LewisC構造合成責任酵素遺伝子の同定とRNAiを用いたノックダウン実験については遺伝子発現ベクターの作製を完了しており、今後in vitroでの6-sialyl-LewisC構造合成実験にとりかかる。 3) 6-sialyl-LewisC構造特異的レクチンの同定と局在の解析について、 6-sialyl-LewisC構造特異的レクチンの候補としてミクログリア特異的に発現するSiglecHを提案した。 以上より研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)CRT cKOマウス導入後、ニューロン細胞特異的にCRTをノックアウトし、ノックアウトマウスから初代培養ニューロンを得る。これを野生型マウスから得たミクログリアと共培養し、ニューロン(シナプス)に対する貪食の様子を観察する。貪食効率を野生型のニューロンとミクログリアを共培養した場合と比較する。 2)6-sialyl-LewisC構造合成責任酵素遺伝子の同定が完了し次第、ニューロン内の当該遺伝子をRNAiを用いてノックダウンする。ノックダウンによる貪食への影響を1)と同様の方法で解析する。 3)相互作用解析によりSiglecHが6-sialyl-LewisC構造特異的レクチンの候補であることを見出した。試行回数の増加、より6-sialyl-LewisC構造に近いコントロールを用た実験等により結果の精度を高める。 4)6-sialyl-LewisC構造合成責任酵素遺伝子改変マウスの作製について、採用期間中の完了は困難であると考えられる。採用期間終了後もマウス作製を継続する予定ではあるが、1)と2)の実験により当該マウスを用いた研究からもたらされる知見を補うことができると考えている。
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