研究課題/領域番号 |
14J03111
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藪中 俊介 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ソフトマター / コロイド / イオン / 電荷 / アクティブマター / マランゴニ効果 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に、1.二元混合系での選択的溶媒和効果による電荷反転効果、2. 増殖するアクティブマターの連続体理論、3. マランゴニ効果に起因した自己推進する液滴間の相互作用、4.液晶コロイド混合系のレオロジーの研究を行った。 1. 二元混合系に、選択的溶媒和効果を持つ塩を加える事で、ミクロ相分離などの構造形成が起こる事が知られているが、1成分を吸着する電表面荷を持つ壁付近での、組成、イオン濃度の計算を行い、イオン濃度が大きい場合、壁の電荷から予想される向きと反対の向きの電場が生じる(電荷反転)事があり得る事を示した。 2.近年、発生との関係から成長中の組織での細胞の集団運動が盛んに調べられている。私は、このような系を念頭に置き、キュリー研究所のPhilippe Marcq博士とともに増殖するアクティブマターの連続体理論を構築した。具体的には、配向場(組織においては細胞極性)を記述するアクティブゲル理論を密度の増殖を含むよう拡張した。解析の結果、十分非平衡度が高い場合、一様状態が不安定となり、 密度波が発生する事を示した。 3. 以前、マランゴニ効果に起因した自己推進する液滴のモデルを構築した。今年度は、このモデルの数値計算を行った。このモデルで液滴同士の相互作用を解析的に導出し、液滴の縮約された運動方程式を導出した。そして、縮約された運動方程式の解を二個の液滴の正面衝突のケースでモデルの直接数値計算の結果と比較し半定量的な一致を見た 4. 液晶コロイド混合系では、欠陥の絡まり合いにより、非常に低いコロイドの体積分率で粘性率の発散が起きる。私は、この系をGinzburg-Landau理論および、FPD(Fliud particle dynamics)法による数値計算を用いて研究した。しかし、期待に反して実験で用いられている体積分率程度では、粘性率には顕著な増大が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶コロイド系のレオロジーに関してはやや遅れているものの、液滴の自己推進運動の研究を着実に進め、イオンの関わる現象に関して予想外の進展を得ており十分な成果が得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、イオンの関わる新奇な現象の研究を行っていく。また液晶コロイド混合系に関しては、他の対称性を持つ液晶に関しても考察を広げて興味深い現象を探索する。
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