本年度は、1.二元混合系中でのイオンの選択的溶媒和効果に起因する電極上での表面相転移の研究及び、2.増殖を取り入れたアクティブマターの連続体理論の構築、3.自己推進する液滴の研究を行なった。 1.では、選択的溶媒和効果を持つイオンを含んだ二元混合系を考え、表面電荷を変化させた際の1次元的なプロファイルを計算し、電圧降下が、表面電荷の非単調関数になることを発見した。さらに2次元計算も行うことで、非単調になっている解のブランチでは、1次元的な解が不安定となり、その結果として表面電荷が異なった1次元的な解が空間的に共存すること(局所的な電極上の電荷の相分離現象)を発見した。この結果を論文として投稿中である。 2.では、細胞組織を念頭に置き、増殖を取り入れたアクティブマターの連続体理論を昨年度に引き続き研究した。実験的に観測されている、増殖率と、局所的な組織伸長、及び組織内部でのストレスの結合を取り入れた理論を構築し、組織成長速度を計算した。また、極性場を取り入れた理論を研究し、組織内部での力学的な進行波の数値シミュレーションも行なった。理論の定式化に関する論文を投稿中で、進行波に関する論文も準備中であり、早急に投稿する予定である。 3.では、過去に化学反応により駆動する液滴の研究を行ったが、より現実の実験に近い系のモデリングについて考察し、一例としては、3元混合系における平衡状態からずれた組成を持つ、液滴の自己推進運動のモデリングを行なった。
|