本研究課題では、実験・理論・計算を複合的に用いた解析により、細胞の運命決定に重要なERK (extracellular signal-regulated kinase) 経路をはじめとする細胞内反応ネットワークの動態を詳細に特徴付けることを目的にしている。27年度までに,生細胞蛍光イメージングを中心とした実験的手法により、ERK経路における応答特性を詳細に解析した。28年度は、これまでに得られた実験データや数値シミュレーションデータを、理論・計算を中心とした手法により詳細に解析した。特に、生細胞蛍光イメージングによって取得可能な1細胞解像度の時系列データを想定し、そのダイナミクスから背後にある反応ネットワークを推定する解析手法の開発を行った。具体的には、パーティクルスムーザーとL1正則化の手法をEMアルゴリズムの枠組みに取り込んだ手法を開発した。その結果として、人工データを用いた解析から、本手法では2-3 nodeのネットワークの構造と反応パラメータをほぼ正しく推定できることを確認した。非線形な反応を扱える点、生化学反応ネットワークにおける正則化の方法を定式化した点が本研究の特徴である。
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