研究課題/領域番号 |
14J03161
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
國生 拓摩 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 赤外線天文学 / 超新星残骸 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、南アフリカ望遠鏡IRSFと赤外線天文衛星「あかり」の観測データを使用して、超新星残骸における星間物質の振る舞いを調べることである。具体的には、IRSF望遠鏡に狭帯域フィルターを搭載し、一階電離鉄や水素分子の輝線マッピング観測を行うことで、衝撃波と相互作用する星間ガスについて調べる。さらに、「あかり」の観測データを用いて、衝撃波が星間ダストに与える影響を探る。また、IRSF望遠鏡に搭載する可視・近赤外線分光器を開発し、本研究の超新星残骸サンプルの追観測を行うことで、星間ガスの物理状態についてより詳細に調べる。 当該年度は、昨年度に引き続き可視・近赤外線分光器の開発を進めた。本装置には、望遠鏡焦点面をモニターして観測を効率的に行うための、近赤外線スリットビュワーが搭載される。本年度は、このスリットヴュワ―の光学調整を低温下で行い、また、使用する検出器系のノイズなどの評価を行った。さらに、検出器の読み出しにおけるノイズを低減させるため、読み出し回路の一部を新たに開発した。 超新星残骸の研究では、本研究のサンプルであるIC443について解析を進めた。IRSF望遠鏡と「あかり」の観測データに加えて、X線天文衛星「すざく」によって得られたX線スペクトルから、高階電離した鉄の空間分布を得た。これらの結果から、衝撃波と相互作用するダストの組成について観測的知見を得ることができ、結果を査読付き論文としてまとめ、国際研究会などで発表した。 上記の研究に加えて、「あかり」の全天観測結果を利用した、早期型銀河におけるダストの統計的研究を新たに進めた。過去の研究から様々な物理量が得られている多数の早期型銀河サンプルについて、ダストの質量や温度などを新たに求めて、これらの銀河におけるダストの供給源や進化について調べ、その結果を国際研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、IRSF望遠鏡に搭載する分光器の開発を進めた。具体的には、望遠鏡焦点面をモニターして観測を効率的に行うためのスリットビュワーの低温下での光学調整、および検出器系の評価を行った。また、常温下で近赤外分光部の光学調整を進め、検出器の読み出しにおけるノイズを低減させるため、読み出し回路の一部を新たに開発した。 超新星残骸の研究については、IRSF望遠鏡と「あかり」・「すざく」衛星の観測データを組み合わせることで、星間ダストの組成について観測的知見を得ることができ、この結果を査読付き論文や学会などで発表した。 さらに、当該年度では「あかり」衛星の全天観測結果を用いた、早期型銀河におけるダストの統計的研究を進めた。この研究は早期型銀河におけるダストの性質や起源について探るもので、得られた結果を学会などで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
IRSF望遠鏡に搭載する分光器の開発について、今後は低温下での光学調整を進めていく予定である。現在、本装置に必要な光学コンポーネントは全て揃っているため、それらを組み上げ、望遠鏡からの光を模した光を装置外部から入射させて、常温、低温下で光学系の評価を行う。また、検出器の読み出し回路や、電源ユニットなどを本装置に固定するための機構を設計・開発する。さらに、本装置を望遠鏡に取り付けるためのユニットを新たに開発し、現地で観測装置の取り換えを効率的に行えるようにする。平成28年度中に実験室内で装置を完成させ、現地へ輸送して試験観測を行う予定である。 早期型銀河の研究では、「あかり」の全天観測結果を利用して、大規模な早期型銀河の赤外線サンプルを作成する。これらのサンプル銀河について、他のカタログから得られる他波長の観測結果を組み合わせて、早期型銀河におけるダストの性質や起源について、より一般的な観測的知見を得る。また、これまで進めてきたサンプル銀河についての解析も進め、結果を査読付き論文としてまとめる。
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