外来種は侵入先の環境で素早く適応進化することが知られているが、このような外来種の適応進化が、外来種の侵略性やその防除・管理とどのように関連しているのか、またその適応進化の遺伝的背景はどのようにものなのか、に関してはほとんど解明されていなかった。そこで本研究では、北米から侵入した外来植物のブタクサ・オオブタクサと、ブタクサの天敵であるブタクサハムシを対象に、侵入後の適応進化過程、適応進化が侵略性や防除に与える影響、そしてその遺伝的背景を明らかにすることを目的に研究をおこなう。 本年度は、昨年作成したブタクサ・オオブタアクサの原産地×侵入地のF1種子を発芽させ親世代の株とともにその発現遺伝子のプロファイリングを行うためRNAを抽出する予定であった。しかしながら、RNAの適切な抽出方法の選定が難しく、また申請者のブタクサ・オオブタクサ生体に対するアレルギーの発症により、思うように実験が進まないことが昨年度より予想された。そのため、申請テーマの範囲内でテーマを少し変更し、ブタクサの天敵であるブタクサハムシ側の適応進化とその遺伝的背景を探ることを主眼とした研究を新たに展開させることにした。 ブタクサハムシは日本に侵入後、原産地では利用できなかったオオブタクサを利用していることが報告されている。申請者らは、日本に侵入したのちブタクサハムシがオオブタクサを利用できるように短期間で適応進化したという仮説をたて検証を行った。その結果、原産地である北米のブタクサハムシはブタクサのみを餌として利用して同所的に生育しているオオブタクサを利用できないのに対して、侵入地の日本ではブタクサに加えオオブタクサをも餌として利用できるように行動的・生理的に進化していることが分かった。
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