研究課題/領域番号 |
14J03244
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
ピョ ユンソク 九州大学, システム情報科学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | Intelligent room / Sensor network / Robot Operating System / Service robot / Task management / Online motion planning / Position measurement / Sensor fusion |
研究実績の概要 |
1.センサ情報ネットワークとしての床面レーザ計測システムの追加 床面上の数センチの高さにレーザレンジファインダ(LRF)を設置し,計測された距離値から輪郭を抽出し,床面上の足,ロボット,家具什器,小物などの位置や移動状態を計測するものである.LRFを用いて物体の位置を計測するシステムでは,物品が同時に多数計測された場合,輪郭情報のみから点群を対象毎に切り分けそれぞれに適切なラベルを付加しなければならない.そこで,LRFでは距離値と同時に反射強度が副産物として得られることに注目し,従来の研究では積極的に用いられることのなかったレーザ光の反射強度と距離計測値を併用した物品識別手法を提案した.
2.処理フローを考慮した柔軟な情報ネットワークの構築 環境情報構造化システムの満たすべき要件として,(1)センサ,システム,ロボット間の通信機能,(2)規模に応じて柔軟に組み替え可能なデータベース機能,(3)膨大なセンサ情報から意味のある情報を抽出する機能,(4)ロボットのタスク管理機能が挙げられる.本研究では(1)に対し汎用ロボットOS(ROS)を拡張し,これまでにLRF, RGB-Dカメラ, カメラ, 3次元計測器のVelodyne,モーションキャプチャーなどのセンシングシステムを構築した.(2)ではクラウド型データベースを構築し,(3)では各センサごとに生データから意味のある情報を抽出する機能を実装している.(4)では情報構造化環境において,多様なロボットに対し作業設計ができる,柔軟で汎用性の高い作業情報構造化アーキテクチャを構築した.タスク設計ではロボットのタスクを,タスク間で共有できるサブタスクの集合として定義した.タスク管理では上位モジュールとしてタスクスケジューラモジュールを構築した.本システムをROS-TMSと名付け公開している(github.com/irvs/ros_tms).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境側に分散配置された様々なセンサや処理アルゴリズムをネットワーク化し,目的ごとに構成を組み変えて必要な情報を取得,処理するとともに,結果をクラウド型データベースに格納し,大規模環境においてロボットからの問い合わせやサービス提供を実現するシステムの構築手法を開発することが本研究の目的である.このため,今年は以下の要素の開発に取り組んだ.
1. センサ情報ネットワークとしての床面レーザ計測システムの追加:この床面レーザ計測システムを環境情報構造化に基づくサービスロボット実現のためのセンサ情報ネットワークの一つして開発した.これまでの成果は,センサ関連で主要な国際論文誌であるSensorsで発表している.
2.処理フローを考慮した柔軟な情報ネットワークの構築:生活支援ロボットの実用化に向けた環境情報構造化に関する研究で,センサネットワークやサービスロボットを統合して運用するためのアーキテクチャROS-TMSの開発を行っている.環境情報構造化を実現する情報管理システムの満たすべき要件としては,(1)センサ,システム,ロボット間の通信機能,(2)規模に応じて柔軟に組み替え可能なデータベース機能,(3)膨大なセンサ情報から意味のある情報を抽出する機能,(4)ロボットのタスク管理機能が挙げられる.本年度の成果としては,これらの機能を揃えた新たな情報構造化アーキテクチャ(ROS-TMS)を構築し,システムを公開している.また,日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会で既に発表済みであり,ロボティクス分野の主要な国際論文誌であるRobotics and Autonomous Systemsを含む学術論文誌に3本の論文を投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
情報構造化はロボットが作業を行う空間に様々なセンサを配置し,空間内のモノやヒト,ロボットの位置や状態を逐次収集,蓄積,提供することで,ロボットをより導入しやすい日常生活環境を構築する枠組みである.今年はこのシステムの基本センサ情報ネットワークや新たな情報構造化アーキテクチャ(ROS-TMS)を構築した.
今後は,これまでにROS-TMS技術を用いて構築した屋内空間プラットフォーム,および実空間とシミュレーション空間を直感的に結びつけるサイバー空間の可視化システムと,その仮想空間で行う作業情報構造化アーキテクチャの追加機能である半自動タスク作成に取り組む.これらは,実空間で分散センサにより収集された環境情報を基にシミュレーション空間を構築し,シミュレーションの結果得られた次時刻の状態をVRとAR技術を用いて直感的に扱うものであり,生活支援ロボットの実用化に向けた環境情報構造化キラーアプリケーションになるとも言える.
また,一般家庭を完璧に模倣した施設内でサービスの提供実験を行う予定である.その際,日常的に発生する日常タスク(整理,掃除など)や,携帯端末を通してユーザから要請された単発タスクなど,同時並行的に実行されるタスクを管理するサービススケジュールマネージャーを開発する.サービスを行う際に,データベースに蓄えられた情報を用いて,複数ロボット間の役割分担や作業計画を行うノードを開発する.掃除ロボットTurtleBotやヒューマノイドロボットSmartPAL-V(安川電機)などの複数のサービスロボットや,LRF,慣性センサなど分散環境センサを用いて,日常的に発生するお茶配り,整理,掃除,日用物品の手渡しや取り寄せ等のサービスを行う実機実験を行い,システムの汎用性,有効性を確認する.
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備考 |
本年度の成果は,本研究のシステムをROS-TMSと名付け公開している(https://github.com/irvs/ros_tms)
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