研究課題
深海底熱水活動域に固有の甲殻類ゴエモンコシオリエビを対象にした本研究は、異種生物間相互作用を糖鎖生物学的に分子レベルで解明し、応用展開することを目的としている。これまでに下記の成果が得られた。1.血清中に、少なくともウマand/orウサギ血球を凝集する2種類以上のレクチン(異物認識タンパク質)が存在することを見出した。血清を添加した際に凝集が観察された深海性独立栄養細菌(Sulfurimonas autotrophica OK10)と凝集が観察されなかった細菌(Sulfurovum sp. NBC37-1)を用いて、血清が細菌の増殖に及ぼす影響を観察したところ、凝集した細菌に対して増殖阻害効果を示すことを明らかにした。また付着共生菌への血清成分の結合が糖により阻害されないことを見出した。これらの成果は本年度、論文にまとめ発表した。2.ゴエモンコシオリエビの特徴を客観的に評価するため、ゴエモンコシオリエビとその他の甲殻類を比較し、ゴエモンコシオリエビ腹部剛毛および第三顎脚毛の特徴を見出した。3.ゴエモンコシオリエビ血清中タンパク質の塩濃度と構造の関係を調べるため、NaCl濃度を変化させゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行ったところ、塩濃度による血清タンパク質の構造変化がレクチン活性に影響する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
研究計画では、本年度は深海性無脊椎動物の血清中レクチンの精製を行う予定であった。しかし、ゴエモンコシオリエビ血清中レクチンの活性が安定しないため現在も精製法を検討中である。加えて当初想定していた『レクチンによる共生菌の認識』とは別の異種生物間相互作用機構が存在する可能性が示唆されたことから、新たな方向を模索している。
ゴエモンコシオリエビと付着共生細菌の特異的な相互認識・作用機構を理解するため、今後は本甲殻類とその他の甲殻類の解剖学的な比較を行い、深海性甲殻類の形態的な特徴を明らかにする。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Microbes and Environments
巻: 30 ページ: 228-234
10.1264/jsme2.ME15066