研究課題/領域番号 |
14J03268
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
木村 真之 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 肝発がん物質 / 細胞増殖 / 細胞周期 / アポトーシス / ラット |
研究実績の概要 |
本研究では、発がんの初期過程に関与する可能性の高い細胞周期異常に着目した短期発がん予測系の開発を目的とする。本年度は、肝臓標的発がん物質の反復投与による反応性の変化を検討する目的で、以下の1)、2)の実験を行い、肝発がん物質投与の初期に生じる肝細胞増殖活性の変動に伴う細胞周期分子発現およびアポトーシスの経時的な変化を検討した。 1)肝発がん物質の3、7ないし28日間反復投与実験 ラットに、無処置群、肝発がん物質(メチルオイゲノール、チオアセタミド)群ないし非発がん肝毒性物質(アセトアミノフェン、α-ナフチルイソチオシアネート、プロメタジン)群と、2/3部分肝切除群を設定した。実験開始後3日、7日及び28日目に肝臓を採取し、免疫組織化学染色およびreal-time RT-PCR法による解析を行った。経時的な解析の結果、発がん物質の28日間の反復投与によってはじめて、スピンドルおよびG1/Sチェックポイント機構の破綻を示唆する結果が得られ、細胞周期の異なる制御点の複合的な異常が発がんの初期過程に生じていることが考察された。 2)肝発がん性が指摘されている動物薬・肝発がんプロモーターの7、28ないし90日間反復投与実験 ラットに、肝発がん物質である(メタピリレン、チオアセタミド)を陽性対照として、肝発がん性が指摘されている動物用医薬品 (カルバドックス、ロイコマラカイトグリーン)、肝発がんプロモーター(β-ナフトフラボン、オクスフェンダゾール)ないし非発がん肝毒性物質 (アセトアミノフェン、プロメタジン)を7、28及び90日間反復投与した。実験終了後肝臓を採取し、免疫組織化学染色による解析を行った。経時的な解析の結果、陽性対照物質では検討した分子群の反応性が認められたが、動物薬やプロモーターでは最長90日間反復投与の解析においても反応性は認められず、その有効性は見出せなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、肝発がん物質の3、7および28日間反復投与実験を実施し、発がん過程初期における細胞周期の細胞周期の異なる制御点の複合的な異常の関与を示唆する結果が得られ、国際学術雑誌であるJournal of Applied Toxicologyに受理されている。続けて肝発がん性が指摘されている動物用医薬品や二段階発がんモデルでしか検出できない発がんプロモーターに関して7、28および90日間反復投与実験の実施・解析を終了し、現在論文を執筆中である。さらに、腎発がん物質(動物薬を含む)の反復投与例での解析や発がんプロモーターでの二段階発がんモデルを利用した解析を実施しており、成果が得られ始めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肝発がん物質の28日間反復投与によって見出された現象の異なる発がん標的間での普遍性を確認する目的で、腎臓を標的とした発がん物質の反復投与で同様の事象が生じるか否かを追求する予定である。また、90日間の反復投与で反応性が認められなかった肝発がん物質・プロモーターについて、発がんイニシエーション後の発がん促進早期での解析を行い、細胞増殖誘発性に乏しい発がん物質・プロモーターの検出性の検討を行う予定である。
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