研究課題/領域番号 |
14J03284
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中須賀 美幸 広島大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | プラマーナ・ヴァールティカ / ダルマキールティ / カルナカゴーミン / シャーキヤブッディ / アポーハ論 / 仏教論理学 / 真理論 |
研究実績の概要 |
今年度は、ダルマキールティの『プラマーナ・ヴァールティカ』第1章「自己のための推理」アポーハセクション(PV I 40-185)の翻訳研究を中心に、以下の研究を行った。 1) PV I 48に対する注釈家カルナカゴーミンの解釈を分析することによって、 i) ダルマキールティは推理・知覚判断の確定知(niscaya)としての側面に着目して付託の排除を論じているにもかかわらず、カルナカゴーミンは判断(adhyavasaya)としての側面に基づいて、PV I 48を意図的に読み替えていること、 ii) この解釈の背景には「肯定が理解される時に、間接的に否定が理解される」とするカルナカゴーミンのアポーハ解釈があること、iii)カルナカゴーミンは、知覚判断の場合の付託の排除を推理の場合にも適用することによって、間接的対象となりえない排除機能としてのアポーハを否定していること、の3点を明らかにした。 2) さらに、ダルマキールティの確定知に関する議論とシャーキヤブッディの真理論の比較を通じて、両者の構造の一致を明らかにした。そして、ダルマキールティにとって直接知覚の整合性を説明するために要請されたものである知覚判断が、シャーキヤブッディによって、直接知覚が自律的真であることを説明するものとして、真理論の文脈で継承されていることを指摘した。 3)また、前年度に用法を分析したniscaya(確定)、 adhyavasaya(判断)に加えて、niscayaと同義で理解されがちなpariccheda(決定)という用語の指示範囲を、シャーキヤブッディ解釈と共に再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ダルマキールティの「付託の排除」論や確定知についての前年度の研究成果を踏まえて、1)註釈家の思想的位置付けや2)後代の真理論における影響の解明といった、より発展的な研究ができた。さらに、3)用語分析についても進展があった。研究課題は当初の予定どおり順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
『プラマーナ・ヴァールティカ』第1章の翻訳研究を引き続き行い、ダルマキールティの認識論におけるアポーハの機能・位置付けを解明する。さらに、ダルマキールティの後継者であるダルモーッタラのアポーハ論との比較をすることによって、思想的変遷を明らかにする。
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