研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、銅およびケトンを用いた光によるアリル位炭素―水素結合のカルボキシル化反応に関して、研究を進めた。本反応の鍵となるケトン触媒を検討した結果、キサントンが効率よく目的生成物を与えることを見出した。また、さらなる最適化のため、さまざまなケトンを合成し、反応条件に付したところ、3,6-ジフェニルキサントンを用いたときに、もっとも高い収率で生成物のカルボン酸を与えることがわかった。これを最適条件とすることで、天然物であるβ-ピネンを含むさまざまなアリル化合物に本反応を適用することができた。(Chem. Eur. J., in press) 次に、上記の反応から発展させ、光と遷移金属触媒の協同作用によるベンジル位の炭素―水素結合カルボキシル化反応に着手した。さまざまな遷移金属と基質の組み合わせを検討した結果、2-メチルベンゾフェノンを用いた際に、ベンジル位炭素―水素結合のカルボキシル化体が観測された。さらに詳細な検討の末、本反応は遷移金属のみならず、塩基や還元剤の添加さえも必要としないことが明らかになった。さらに、本反応は太陽光で進行することも明らかにした。(J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 14063-14066) 続いて、トルエン誘導体のベンジル位炭素―水素結合のカルボニル化を目標とし、紫外光を照射しながら、さまざまな遷移金属触媒の存在下、カルボキシル化反応の検討を行った。その結果、ニッケル触媒を用いたときに反応が進行することを見出した。具体的には、p-キシレンに対し、ニッケル触媒およびケトン触媒としてキサントンを用い、ベンゼン溶媒中1気圧の二酸化炭素雰囲気下、365nmの紫外光を2時間照射したところ、p-トリル酢酸が72%の収率で得られた。詳細な反応機構と基質適用範囲に関する検討を現在行っている。
|